第六十九話 岐阜での会見その八
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「主の義景殿は如何だったでしょうか」
「あの方は」
「あえて申し上げませんか」
織田家と朝倉家の感情的なしこりは知っていたのでだ。明智はそのことについてはあえて答えずにだ。この人物の名を出すのだった。
「朝倉宗滴様はかなりの方でした」
「そうですな。朝倉家にも人がおりますな」
林がだ。一同を代表して渋々ながら認めた。
「あの御仁は天下の傑物でございますな」
「はい、まさに北陸一の方です」
「しかしあの方は」
ここからがだ。織田家の者の言葉だった。林は代々織田家に仕えているだけにだ。朝倉家に対する敵愾心は強くこう述べたのであるy。
「もうかなりの御高齢でございますな」
「だからですな」
「こう言っては何ですが」
林は言葉を慎重に選びながら述べる。
「あの方がいてこその朝倉家ですから」
「ではあの方がいなくなれば」
「どうなるかわかりませんな」
「それに宗滴殿がおられたにしても」
柴田が不敵な笑みで言うのだった。
「わしと牛助の二人で。食い止めてみせよう」
「流石に勝てるとは思えぬがのう」
佐久間が言う。織田家の武の二枚看板二人ならば分けられるというのだ。
「あの御仁相手でも。わし等二人ではな」
「何とか凌げるわ」
「そして織田家はわし等だけではない」
佐久間は他の面々も見た。とりわけ今はだ。
滝川を見る。そして言うのだった。
「久助の様な者もおる。あの御仁を止める間に他の者を倒せばいいだけじゃ」
「さすればです」
滝川も織田家の者だ。それならばだった。
「それがしが他の朝倉家の面々を撫で切りにしてみせましょう」
「おっと、久助殿だけに功を挙げさせんぞ」
「わしもおるのじゃ」
「わしもじゃ」
次々にだ。織田家の面々が名乗り出て来る。
「朝倉にはここまで人の数はおるまい」
「我等が殿と共に一丸になり向かえば朝倉殿とてどうということはない」
「戦になれば必ず倒すわ」
「絶対にのう」
こう話す彼等だった。その話を聞いてだ。
明智は内心強く頷いた。そうしてだった。
ひそかにだ。木下にこう囁くのだった。
「見事ですな」
「織田家がでございますか」
「よくまとまっております」
織田家の結束をだ。感じ取っての言葉だった。
「これだけ見事にまとまっている家は少ないかと」
「左様でございますか。いや、実際にです」
「実際に?」
「おって中々楽しい場所でありますぞ」
にこりと笑ってだ。木下は明智に話した。
「織田家というところは」
「楽しいのでございますか」
「殿も立派な方ですし」
信長からだった。木下が言うのは。
「それにお歴々もです。どなたもよい方ばかりで」
「戦国の世に思えぬまでにいいものを持っておられる方ばかりですな」
心
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