第三十二話 相互理解その二
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「他にも色々と読んでるけれどな」
「成程な。それならばだ」
「ああ、二人の仲がよくてもな」
「それだけで幸せになれるとは限らない」
「世界ってあれなんだよ」
少し達観した感じになってだ。中田はここではこう言った。
「二人だけで成り立っていないんだよ」
「他にも大勢の人が周りにいて成り立つ」
「だよな。それはな」
「だからだ。俺はだ」
「周りを納得させたいんだな」
「そうだ。だからこそだ」
剣士として戦い、そしてだというのだ。
「俺は戦う」
「最後の一人になってそうして」
「願いを適える」
「あの娘と一緒になるのか」
「彼女の牧場は特別だ」
「特別?」
「大きい。しかもだ」
それに加えてだというのだ。
「親父さんもお袋さんも難しい人らしい」
「ああ、頑固とか気難しいとかか」
「そうだ。そうした人らしい」
「それ実際に会っての言葉かい?」
ふとだ。中田は広瀬にこう尋ねたのだった。
「あんたが直接な。会ってのことかい?」
「ご両親とか」
「話を聞いてると会ってないな」
中田は彼の話からこう読んでその読みをそのまま告げた。
「だよな。会ってないよな」
「それはな」
「だろ?会ってないとな」
「実際にそうした人間かどうかはわからない」
「百聞は一見にしかずだろ」
笑ってだ。中田はまた広瀬に話した。
「人だってな。噂じゃそうでもな」
「実際は違う」
「そうしたこと結構多いだろ」
中田はコーヒーを片手に話す。
「俺だってそうしたことあったからな。噂じゃとんでもない人でもな」
「実際に会ってみるとか」
「ああ、全然違ってな」
具体的にだ。どういった人間だったかというと。
「凄く気さくでいい人だったな」
「そうしたこともあるからか」
「実際に親父さんやお袋さんに会ってみたらどうだよ」
「そうしてその目で確かめろか」
「ああ、そうしたらどうだ?」
中田は広瀬のその目を見てこう提案した。
「そうしたらどうだ?」
「いや、それは」
「できないか?」
「できない」
広瀬は表情は消している。だが、だった。
その目には引いているものを見せてだ。そして言ったのだった。
「俺はだ」
「おい、会うだけだろ」
「そのご両親に会う」
「ああ、そうしたらすぐにわかるぜ」
「会えるかどうかすら問題だ」
「門前払いな」
「実際にそうして会ってもらえなかった人も多いらしい」
広瀬はその目に否定の色を出して中田に話していく。
「あまりしつこく言って頭から水やゴミをかけられた人もいるらしい」
「全部らしいだろ」
「らしいか」
「ああ、全部噂や聞きずての話だろ」
中田は素っ気無く広瀬のその態度を批判した。
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