第六十九話 岐阜での会見その六
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その筋骨隆々の身体に無邪気だが精悍な顔にある純粋な目を見てだ。彼は言ったのである。
「見たところかなりの武芸者ですな」
「武芸と遊ぶことが全てでござる」
「全て。風流ですな」
「細川殿はおわかりですか」
「それがしの名前を存じておられるのですか」
「はい、お話は聞いています」
慶次は笑顔で細川に話す。
「それで。先に失礼ながら」
「ううむ、既に御存知だったとは」
細川はそこに慶次の非凡を見た。ふざけていてもだ。
そこにあるものを見てだ。そして言うのだった。
「御見事です」
「見事でございますか」
「慶次もひとかどの方ですな」
「おっと、褒めても何も出ませんぞ」
ふざけたままで返す慶次だった。そしてだ。
彼は茶を飲みつつそこにある菓子も口に入れる。そのうえでだ。
彼はだ。こうも言うのだった。
「ではです。これからもでござるな」
「はい、ではこれからも」
「宜しくお願いします」
明智に細川もだ。それに応えてだった。
笑顔で応える。そのうえでだった。
明智はここでだ。木下を見た。そしてだった。
その彼にだ。こう声をかけたのである。
「貴殿は」
「おや、それがしに何か」
「はい、お名前を御聞きしたいのですが」
「いやいや、権六殿とは違いそれがしなぞ下っ端でござるが」
木下は笑ってひょうきんな仕草で明智に応える。
「そのそれがしに何か」
「かなりの方ですな」
木下の目を見ての言葉だ。小さいが確かな光を放つその目をだ。
「どうやら」
「それがしが、ですか」
「はい。この天下を変えるまでに」
木下をだ。こう評したのである。
「それだけの資質を持っておられますな」
「学がなく字も満足に読めませぬが」
「人はそれだけではありますまい」
学問や字だけではないというのだ。
「木下殿は非常に大きなものを持っておられます。学問に収まりきれぬものがです」
「あり申すか」
「はい、木下殿は必ず大きなことを為されます」
「そうであればよいのですがな」
明智の話にだ。木下は得意そうに笑ってだ。
そうしてだ。今度はこう言ったのである。
「功を挙げればその褒美で母上を楽にさせられますからな」
「御母堂ですか」
「それがしだけが贅沢に暮らすことは少し頑張れば出来ます」
実際に商才もありだ。木下は針を売って儲けていたこともある。信長に仕える前にだ。
「それに弟もいますし」
「そちらの方ですな」
明智は木下の傍らにいる秀長も見た。見れば彼は検挙に控えている。
「こちらの方もかなり見事な方ですな」
「有り難き御言葉」
秀長は畏まって明智の言葉に応える。
「身に滲みます」
「しかし母上はです」
木下はさらに話す。母親のことになるとかなり饒舌
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