第六十九話 岐阜での会見その四
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「それは間違いありませぬな」
「はい、都にあまりいては。若しくは近付けばです」
それでどうなるかというのだ。
「都のその独特のものに捕まってしまいます」
「そうしてですか」
「はい、都にです」
そのだ。都の何かというとだった。
「あの平家の様に」
「平家ですな」
その平家のことを考えてだ。
そのうえでだ。細川は言ったのである。
「あれは確かに。都に入り過ぎた故に」
「あの様になります」
「あまり公家の方の様になってはいけませぬか」
「我等は武家です」
明智はそのことは強く言った。
「武家ならです。公家の方の様になってはです」
「違ってきますな」
「ですから。あまり都の中にいては」
「そういえば幕府もです」
今の室町の幕府、それはどうかというのだ。
「義昭様もそうですが」
「はい。公家の方々の様になっておられますね」
「それもなのですね」
「はい、よくはないかと」
これが明智の考えだった。
「義景様も都からは離れられぬと仰っていましたが」
「あれですな」
「あの御言葉についてどう思われますか」
真剣な顔で細川に問う。
「細川殿は」
「どうにも。あれは」
「いただけませんか」
「色々と聞いてわかりました」
どうかというのである。
「織田殿はまさに天下の器です」
「そうです。あの方はです」
「あの方ならば必ずや天下に泰平をもたらしてくれます」
「ではあの方に義昭様は」
「お任せするべきかと」
「そうですな。やはり」
明智も細川のその言葉に頷く。そのうえでだった。
彼は信長についてだ。こう述べたのである。
「あの方も義昭様を見ておられましたが」
「そしてそれによりですな」
「義昭様の器も見られたかと」
「鼎の軽重を見られましたな」
問われてはいない。見られたのだ。
そしてその信長が義昭をどう見ているかというのだ。
「軽く見られているやも知れませんな」
「ですな。ですがそれもです」
「仕方がない」
「そうなります」
こうした話もする。そしてだ。
その義昭のことをだ。明智はまた話した。
「公方様になられましても」
「あの方はですか」
「静かにされればいいのですが」
「それはままやらぬかも知れませんな」
「残念ながら」
こうした話もしたのである。彼等にしては成功に終わり喜ぶべき状況になっているがそれでもだった。明智も細川も憂いの顔を見せていたのだ。
だが、だ。その彼等のところにだ。
信長の家臣達が来てだ。笑顔で声をかけてきたのである。
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