第六十九話 岐阜での会見その一
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第六十九話 岐阜での会見
遂にだ。美濃、そして岐阜にだ。
義昭一行が入った。岐阜の町中でだ。義昭は馬に乗りつつ明智に問うた。その見事に栄えている活気に満ちた町を見ながらだ。
「のうこれが織田の国だというのか」
「はい、これまで御覧になられた通りです」
「ううむ、見事じゃ」
明智に言われてからだ。義昭はだ。
唸る様にだ。こう言うのだった。
「田畑も町も。とりわけこの岐阜はじゃ」
「栄えていますな」
「美濃は以前からこうだったのか」
「ここまでは栄えていませんでした」
かつて己がいた頃を思い出して話す明智だった。
「そしてこれまでとはです」
「予想しておらんかったか」
「話には聞いていてもです」
百聞は一見にしかずだ。実際に見れば違うものだ。
それでだ。明智はさらに言うのだった。
「実際に見るとよくわかります」
「これでは都の様じゃ」
そこまで栄えているというのだ。
「越前にも近江にもこれだけの町はないぞ」
「一乗谷の城下町も中々のものでしたが」
「近江の浅井の領地もよかった。しかしじゃ」
「織田殿のところはさらに上です」
「どの町も栄えており」
そしてだ。この岐阜はどうかというのだ。
「ここは殊更にじゃな」
「稲葉山だった頃とは比べものにもなりませぬ」
そこまでだと言う。そして明智はだ。
岐阜の中を行き交う者達を見てだった。
「表情も晴れやかですな」
「戦がないからか」
「それに加えて賊の類も少ないかと」
信長は罪には厳しい。徹底的に追い処罰する。その罪に対して過酷なところがかえって領民の治安を護りだ。国をよくしているのだ。
そして必然的にだ。彼等のその表情もだった。
「だから余計にです」
「よくなっておるのか」
「その様です」
「信長は政が得意なのか」
義昭はふとだ。こう言った。
そして明智はその彼にだ。こう答えたのである。
「これは才かと」
「そこまでじゃというか」
「はい、それがしこれまで多くの国を巡ってきましたが」
明智も苦労をしてきている。その苦労の中で見てきたものを話すのである。
「それでもここまでの国はございませんでした」
「ううむ、織田信長はうつけとは聞いておったが」
「それは噂、いえ」
違うと。明智は言うのだった。
「織田殿がわかっていなかったのでしょう」
「どういった者か理解しておらなかったというのか」
「義昭様はどうなのでしょうか」
ひいてはだ。義昭はどうかというのだ。
「そのことにつきましては」
「わしはわかっておった」
虚勢を張りだ。言う義昭だった。
「そのこともな」
「左様ですか」
「う、うむ」
答えてもだ。目が泳いでいた。
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