第三十一話 広瀬の秘密その七
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そのことについてもだ。広瀬は言った。
「だからあの馬も」
「時々凄い大きさだったわよね」
「本当に人間を踏み潰していたからね」
完全にだ。そうしていたのだ。
「それだけで相当な大きさだよ」
「この赤兎よりずっと大きかったわね」
「比べものにならなかったわね」
「あの人の漫画で他には時代ものもあったけれど」
「あれも凄かったね」
「あの漫画でも凄く大きな馬が出て来たけれど」
時代ものならば馬はほぼ必ず出て来ると言っていい。合戦の時は特にだ。
「あの馬もね」
「人を踏み潰してたけれどね」
「本当に本来は絶対にないのね」
「そうだよ。馬は戦車じゃないから」
生き物なのだ。しかも極めて繊細な。
「俺達は戦車に乗ってるんじゃないんだよ」
「あはは、戦車ね」
「戦車は好きかな」
「興味ないわ」
そうしたものにはだ。由乃は素っ気無く答えた。
「全然ね」
「そう言うと思ったよ」
広瀬もだ。それはもうわかっていた感じだった。そのうえでの言葉だった。
「女の子なら普通はね」
「戦車とかには興味ないわよ」
「俺も特にね」
そしてだ。それは彼もだった。
「馬には興味があってもね」
「牛には?」
「あるよ」
馬を操る為前を見ている。そのうえで笑顔で由乃に答えた。
「豚にも鶏にもね」
「牧場にもよね」
「勿論だよ。ただね」
「学部は違うわよね」
「俺は経済学部だから」
牧場も農学部になるのだ。酪農やそういったものになるがこちらは能楽になるからだ。能楽には農業だけがその範疇にあるものではないのである。
「けれど君はね」
「そう。農学部だからね」
「経済学部と農学部か」
「それぞれ全く違うわね。けれどね」
「けれどか」
けれどという言葉が続く。今では。
「俺達は、かな」
「両方共農学部、経済学部よりも」
それでは分野が偏るというのだ。だがそれぞれ違うと。
「御互い助け合えるじゃない」
「そうなるか」
「牧場も経営だから」
資本主義なら当然のことだ。農業一つも資本主義のうえで考えていかねばならないのが現代日本の社会だ。共産主義なら考えなくてもよいがコルホーズに放り込まれる。
「だからね。経済学もね」
「必要になるんだ」
「そう。経営に失敗したら」
その時はどうなるか。それは。
「わかるわよね」
「経営破綻」
「そう、倒産よ」
由乃は言った。まさにそうなるというのだ。
「そうなるからね」
「シビアなものだな」
「そうよ。けれどね」
「安直な発想だが資本主義でなければ」
「社会主義?共産主義?」
「言葉が違うだけで我が国では同じだ」
その両者はだ。変わらないというのが広瀬の見立てだった。
「我が国の社会主義は口ではリベラルと言うが
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