真夜中の遭遇。紅い曳光
[9/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
反応できるかどうかも怪しいくらいだ。更に言えば、その双眸が放つ紅い光を見た時には既に命が無いと悟るだろう。
だがヴォルフは違った。ナルガクルガを五感を用いて常に捉え、その速さにも対応して戦っている。
上級ハンターの中でも異端とされ人狼と呼ばれるに至った者の実力とは、飛竜に引けも取らないほどの物なのか……。
梓は目の前の光景が信じられず、椿は純粋に双方の戦いに目を奪われ、神無は改めて見せ付けられるヴォルフの強さとそれを手にするに至った道筋に悲しんでいた。
ナルガクルガは未知の敵に対し戸惑いを隠せないようだった。最大の武器である速さと、主力である刃の翼を生かすことが出来ないのだから。
体格差による力は確実にこの飛竜が上回っているのは事実が、その体格差が仇となって人間業とは思えないほどの俊敏性を持っていて尚、小回りが利いて動きを捉えにくい目の前の敵に対し、有効打を決める事が出来ないのだから。
他にいる三人の人間を狙うのは愚策だ。それは同時にこの敵に背を向けることを意味するのだ。それを罠として必殺の機会を狙うのもありだが、能力が未知数の相手にこの不意打ちはリスクが大きいこともあるのだから。
しかし、焦っているのはヴォルフの方だった。
ナルガクルガとの遭遇は始めてである事もあるが、この飛竜の最大の武器である速さ≠ノ表面上はヴォルフは付いていっているように見えるかもしれないだろうが、如何にヴォルフといえど所詮は人間。スタミナ、体格差、力、行動範囲、等々、飛竜とはスペック差がありすぎる。
今はナルガクルガが戸惑っていることに付け込んでいるに過ぎない。
更に言えば、決定打を打ち込む隙が無い。
特に厄介なのはあの翼と一体化した刃だ。あの刃の存在その物が邪魔で迂闊に近付くことが出来ない。まさに攻防一体といえる。
そしてこの飛竜が持つ飛び道具。性質上、そう何度も使用する事は出来ないだろうが、一度の発射で複数の矢が飛来するのは実に厄介だ。
適当に放っても数があれば当たる時は当たる上に、その威力は人間ならば即死級。どう足掻いても消耗戦で不利になっていくのはヴォルフなのだ。
それ以前に、ナルガクルガにこちらの動きを見切られたら確実に敗北する。この場合の敗北とは死≠意味する。
「シャァァァァッ!」
ナルガクルガが犬歯を剥き出しにしつつ、後方へと飛び退いた。更に置き土産とばかり尾から矢を放つことも忘れていない。
ヴォルフはそれらを回避しつつもナルガクルガを視界から外さない。姿勢を低くして躱した状態から目にした飛竜は、後方にある大樹を地面に見立てて後ろ足で着地≠キるとヴォルフの死角となる別の木の影へと跳んだ。
「なにっ!?」
視界からナルガクルガを喪失したヴォルフは、あの黒い飛竜が動くことで鳴り続ける木々が軋んで
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ