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人狼と雷狼竜
真夜中の遭遇。紅い曳光
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ことでヴォルフを回避する。ヴォルフの行動から下した狩猟者としての判断だ。ヴォルフは急な事に行動を切り替えられず対処が遅れる。そこへ返す刀のように、急降下したナルガクルガの尾が轟音と共にヴォルフに叩き付けられた。大地が砕け、石や砂埃が宙を舞う。
「ヴォル君っ!?」
 神無が声を上げるが、返事は無い。
 しかし、ナルガクルガがその場からすぐに飛び退き、そこを白刃の煌きが通過した。
 ナルガクルガが尾を振り下ろすあの一瞬、ヴォルフは強引に倒れこんで地面に掌を当てて掌打を放ち、その反動で尾の範囲から逃れていたのだ。
 刀をゆっくりと切っ先を前に向けた八双に構えるヴォルフをナルガクルガは静かに睨み続け、不意にその瞳の輝きが、より凶悪な光を発した。
 軋むような音と共に尾の先端付近が開き、殺気を交えた咆哮を上げた。そしてナルガクルガは尾を天に向けると素早く振り払う。尾から何かが放たれた。
 ヴォルフはそれを大きなバックステップで躱す。飛来したそれらが直撃した地面は周囲の土を巻き上げ、続いて放たれたものはヴォルフが付けた編み笠の半分を切断した上、後方の樹木の幹には深々と突き刺さった。
 それは幼子の手ほどの大きさの、ナルガクルガの鱗が変化した鱗だった。その威力はまるで弾丸だ。直撃を被れば人の胴などトンネルが空いてしまう。
 第三波が放たれるもヴォルフは紙一重で躱して一気に距離を詰め、その顔を目掛けて袈裟切りに斬り付ける。
『ギャウッ!?』
 苦悶の声を上げつつも、ナルガクルガは鋭い犬歯がズラリと並んだ口を大きく開けるとヴォルフ目掛けて、その(あぎと)の餌食にせんと喰らい付く。しかしヴォルフは既に距離を開けていた為に空振りに終わった乾いた音が響き渡る。
 ナルガクルガを斬り付ける際、あのまま更に距離を詰めて渾身の一撃を放ったところで致命傷を与えることが不可能と踏んだヴォルフは、敢えて浅く斬り付けていた。その結果次の行動へ移る際の隙が大きく軽減され、回避行動に移れたのだ。
 切りつけられたナルガクルガの顔には斜めに走った傷があり、そこから血が鼻を伝って地面に流れ落ちていく。その目には傷を付けられた事に対する怒りを語るかのように、紅い輝きが更に増していた。





「……嘘でしょ?」
「すごい……」
「……ヴォル君」
 目の前の激闘。それは三人が知る狩りではなかった。
 三人が知る狩りとは複数体、または単体のモンスターを何人もの人間が組織だって行うもので、何種類もの武器や罠、小道具などを多数用いるものだ。その様相はまさしく狩り≠ナある。
 しかし、目の前で行われているそれは狩りなどではない。喩えるならば……戦いだ。
 ナルガクルガの速さはとても人間が捉えられる速さとは思えなかった。常人にはその速さは残像しか捕らえられず
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