真夜中の遭遇。紅い曳光
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抜けた声を上げる中、四人が立っていた所を大きな黒い影が猛烈な速さで通過し、突風じみた風が周囲の砂等を宙に巻き上げていく。
ヴォルフはすぐさま神無の上から、梓とぶつかった際に落としたらしい椿の松明を拾い上げて影が飛んでいった方向へと投じる。しかし投じられた松明はその影に弾かれて炎を失い、地面に叩き付けられた。
「っ痛ぅ……ちょっと貴方! 一体何を考えているのよ!?」
「……痛かったのは私だけど」
梓が立ち上がるなりヴォルフに怒鳴り、椿は小さく文句を言う。
「ヴォル君……何を……っ!?」
神無が起き上がりながら戸惑いを露にも問いただそうと声を掛けるが、ヴォルフの表情を見て言葉を失った。危機感を露にしているのだ。
「真っ二つにされなかっただけ運が良かったと思え」
「え?」
ヴォルフが呟くような言葉と共に、神無はそれを見た。椿と梓も確認したようだ。暗がりで輝く二つの紅い光を……
それは何かが動く音と共に尾を引いて怪しく輝いていた。
雲が動き月がその姿を露にすると共に、ヴォルフ達の前に存在する者の姿も月光によってその姿を晒していく。
「ひっ!」
「え……」
「そんな……」
その姿を目に捉えて怯えた声を上げるのは梓、唖然と声を出すのは椿、戦慄したのは神無……
「驚いた。この地は大物揃いだな」
ヴォルフは一人、その場で腰の刀に手を掛ける。
唸り声を上げていたそれが咆えた。獰猛さと凶悪さがその咆哮からも伝わってくる。アイルーなどの鳴き声に獣人に似てはいたが、声量も質も何もかもが桁違いの声は地面を小さく揺らしていた。
何処かアイルーに似た顔はしかし、鋭さを持った嘴を持ち、その目は尾を引く紅い光を炎のように滾らせ、地に付いた四肢の前肢は前足と翼を兼ねている他、その側面には剣呑な黒光りする輝きを放つ刃が備わっていた。
「……ナルガクルガ」
椿が、呆然と目の前のモンスターの名を告げた。
森林地帯の飛竜種の代表格と言える危険極まりないモンスターだ。
ヴォルフが彼女達を些か乱暴な方法で地面に倒したのは、この迅竜とも呼ばれる森の死神から命を守る為だったのだ。
「下がっていろ」
ヴォルフが呟くように言いながら前に出ると、左手で持った鞘に納まったままの刀を腰の左側で固定して右半身を前に出しつつ右手を柄に添えるように構え、それに反応したナルガクルガがヴォルフに視線を定めて体を丸めた上で姿勢を低く構える。
ヴォルフはそれを見て大きく踏み込んだ。地響きでも起きたかのような音が周囲に響き渡ったと神無達が思った頃には、ヴォルフはナルガクルガに向けて疾走していた。音の正体はヴォルフが踏み込んだ際の音だ。その音からも表される爆発的な突進力を持って敵に迫る。
対するナルガクルガは真上に大きく跳ぶ
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