真夜中の遭遇。紅い曳光
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にショックを隠せないのか、愕然としている。
「神無ぁ? この人って……」
椿が動揺して神無に尋ねようとするが、その言葉は途中で止まった。神無の表情が、今にも泣きそうなものだったからだ。
「ヴォル君、それは駄目だよ……悲しいよ。何が、どうしてヴォル君はそんな悲しい事を言うようになっちゃったの? どうして……人狼なんて……」
『っ!?』
神無の言葉に梓だけでなく、神無の後ろで黙って話を聞いていた椿ですら目を見開いて驚愕を表情を浮かべる。
「えぇ!?」
「じん、ろう?」
二人はその言葉の意味を知っていたようだ。人狼の忌み名はここまで知れ渡っている事は、その悪評も付いて回っていることも意味する。
ヴォルフは相変わらず表情を変えない。あくまでいつもどおり感情を見せず、無表情に彼女達を見ていた。
「話が早い。俺に関わらん方が身の為だ」
それは、ヴォルフの今まで経験から言える言葉だった。
彼に関わった殆どの人物が命を落とすか、それに類する経験をしているのは紛れも無い事実だからだ。
「関係無いよ、ヴォル君」
その言葉を聴いたヴォルフは、神無を見た。悲しげな……しかし、優しい笑顔だった。
「人狼とか、そういうのは関係無いよ。ヴォル君はヴォル君だもん。だから……ユクモに帰ろう? ヴォル君の故郷はユクモなんだよ?」
神無が言いながらヴォルフに右手を伸ばした。だが、ヴォルフは彼女の手を取らなかった。
「生まれた所は確かにユクモなのだろう。だが……最早俺に故郷など無い」
それは、自分には居場所が無いと言う事を意味する言葉だ。
「それは違うよ。故郷はね、ヴォル君が思ってるような悲しいものじゃないよ。故郷は、帰りを待ってる人がいるところの事なの。お姉ちゃんも小冬も村長さんも村の皆も、ヴォル君の帰りを待ってるよ。ヴォル君の居場所はユクモにちゃんとあるんだよ」
神無の言葉にヴォルフは言葉に詰まった。今までこんな言葉を言われた事があっただろうか? 否だ。
「私も皆も今のヴォル君≠フ事は何も知らないよ。だから、これから分かり合えば良いの」
「……分かり、合う?」
神無の言葉がヴォルフの胸の奥に広がっていくのが、ヴォルフには何となく分かった。それは……ただ暖かかった。
「うん。そして助け合う。人はね、助け合って生きていくものなの。ヴォル君は強いから誰かに助けられることなんて無かったかもしれないけど、これからはユクモの皆がヴォル君を助けるよ」
神無のその言葉で、胸の奥にあった何かが消えていくのをヴォルフは感じ取っていた。
「俺を助ける……か」
ヴォルフがそう言いながら立ち上がり……梓を椿の方へ突き飛ばし、不意のことに梓は反応出来ずに椿諸共倒れ込み、ヴォルフは更に神無を地面に押し倒した。
「ふえっ!?」
神無が間の
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