真夜中の遭遇。紅い曳光
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の上役の一人がこの状況を見越し、ヴォルフに進言していたのだ。警察組織であるギルドハンター部隊は事が起こらなければ動けないが故に。
そして待ち構えていたヴォルフに、彼らは一人残らず斬り捨てられた。
この件は彼らにこそ非があったとして、ヴォルフ自身は何の罪にも問われなかった。だが、これを期にますますヴォルフには嫌な噂が付き纏った。
人でありながら災厄を齎す者。それがヴォルフに付き纏った噂だった。
それはその後も続いた。
特に最後に味わった敗北は殊更に酷く、生き残ったのは撤退の邪魔になった鎧を棄てたヴォルフだけという有様だった。その原因となったモンスターはすぐに姿を消したようだが、ヴォルフに付いた噂はより酷い物となった。
いかなる災厄からも自分だけが生き残る。血に飢えた獣。関わったものは必ずその牙に身を砕かれる。
ヴォルフ・ストラディスタは人間じゃない。人の姿をしたモンスター……人狼だ。と仕舞いにはそう言われるほどになった。
人間でありながら人間を狩るモンスターとして……そしてモンスターでありながらモンスターを狩る者として『人狼』の忌み名を付けられ、烙印を押されたのだ。正真正銘の異端である。
この状況下でヴォルフは他人と接することを厭うようになっていった。一体何が自分をここまで貶めるのかが理解できなかった。
ヴォルフはそうしてモンスターの生息する危険地帯で生活するようになっていった。一人で剣を磨いていた幼少期に逆戻りしただけともいえたが。
そんな中、気まぐれで久々にギルドへ訪れたヴォルフには、覚えても居ない故郷からの召喚状が届いていた。
頼られたからには行ってみるか、という考えはあったものの『生まれ故郷』という物に何処か引かれるものがあったのも事実だった。
そこで出会った幼少の自分を知る人物、幼馴染を名乗る二人の少女とその妹、そして、存在を今まで考えもしなかった母親とその墓。
墓に花を添え、膝を突いて手を合わせることの意味、その意味が理解できなかった。
それは、生物は死ねば土に返るという認識しかない自分が、知らない世界だった。それを見て思ったのだ。自分は結局、異端なのだと。
そんな自分が、あの村に居て良いのだろうか……それが分からないからこそ、ヴォルフはここに居る。このまま山中で生活し、仕事が入ったときのみ信号か何かで呼び出して貰うのも手だ。現に以前はそうしていた。
ただ、この地にはまだ慣れていない故により慎重さを求められる……
「?」
不意にヴォルフの嗅覚がこの地に似つかわしくない匂いを捕らえた。どこか暖かみを感じさせる物だ。
「ヴォル君!」
声と共に、神無が森の奥から見慣れない二人の少女を連れて姿を見せた。その内の一人、眼鏡を掛けた少女が炎が灯った松明を手にしている。
神無の服
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