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人狼と雷狼竜
真夜中の遭遇。紅い曳光
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。無数の雷光虫が大挙して宙を舞うなど、聞いたことが無かった。
 突然ナルガクルガが屈んで姿勢を低くした途端に高く跳躍した。
「!?」
 ヴォルフはナルガクルガが尾を叩き付けてきたあの一撃を思い出して身構えるが、ナルガクルガの姿は遠く、翼を広げて空を滑空して何処かへと姿を消した。
 ヴォルフはその光景に違和感を覚えた。戦いはまだこれからだと言わんばかりに唸り声を上げていたナルガクルガが、急に戦線離脱するという事態。あまりにも唐突過ぎるこの状況が何を意味するのか……
 それは、あのナルガクルガが速やかなる撤退を選択するほどの……
「くっ!?」
 ヴォルフは刀を油断無く構えた。
 それは即ち天敵≠フ出現に他ならない。
 雷光虫が一点に集中して始める。その光景は一言で言えば美しかった―――――大きな、重くて力強い足音が響いた。
 しかし、同時に死出の旅へと誘うものの前兆に過ぎなかったのだ―――――――月夜の森の一角に、巨大なシルエットが姿を見せた。
『!?』
 硬質的な金属音に似た音が響き渡り、閃光が走った。
「アウォォォォォォォォォン!」
 咆哮が響き渡った。何処か哀しげな……それでも孤高の誇りを含んだ咆哮。
 その直後、落雷の轟音と共に蒼い雷光が柱となって世界の色を文字通り変えた。



 それが姿を現した。
 森に屹立する白き光の柱の中に浮かぶ雄雄しい体躯。
 荒々しくも優雅なその身に纏うは裁きの雷。
 それは森の掟を守り、破りしものを悉く弾劾する。
 この地を統べる王者の姿だった。
 名を―――――ジンオウガという。
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