真夜中の遭遇。紅い曳光
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くりと近付いて肉に触れ、受け取る。
自分の四分の一に近いサイズの肉を両前足で器用に持ったメラルーは、後ろ足だけで歩いてその場を去った。その姿からヴォルフが視線を外したところで……
「上手に焼けましたにゃー」
と、メラルーが言葉を残して行った。
「……」
褒められたのかどうなのかイマイチ真意が理解出来なかったヴォルフは、ガーグァのもう片方の足を腿から断ち、表面の羽毛を短刀で簡単に処理してから肉焼き機に乗せて火に掛ける。
綾乃守陽真理……自分の母親の名前、墓地で手を合わせる神無たち、それらが頭の中から放れなかった。
あの三人の行為に何の意味も見出せない。自分と彼女達の間にある溝を意識せずにはいられない。
そんな自分があの村にいて良いのか? 自分にとっては故郷なのだろうが、ユクモは何も覚えていない見知らぬ土地だ。自分が覚えていないのに、他の人は自分を覚えている……幼少期の自分をだ。
自分があの頃の自分とは最早別人であることは言うまでも無いだろう。もしユクモから旅に出る事が無かったら、自分もあの場にいたのだろう。
同じユクモ村の人間として……。
それが今はどうだ?
死んだ父親が遺した古文書の剣技。独力での修練に明け暮れて数年を過ごした。
場所はこの大陸ではない山岳地帯だった。人里など皆無であり、モンスターは山ほどいた。最初の内は満足に刀を振るえず、逃げ回るのがやっとだったのは忘れようもない。
十歳を過ぎた頃には大体の剣技を身に付け、人里に下りてギルドに加わった。これは余談だが、どうやら行方不明で死亡扱いだったらしい……ハンター間では良くあることだった。
そうして人々は目にする。あどけなさを残した少年が、大の大人ですら苦戦するモンスターを難なく斬り捨ててしまう光景を。少年はすぐに上級ハンターへと昇格した。
それは最初は人々を狂喜させた。だが、人々は次第に少年を疎んで行った。彼の強さに畏怖を抱いた者が出始め、それが次第に広がったからだ。
彼は居辛くなったその地を離れ、世界各地を彷徨った。だが何処に行っても変わらなかった。
行く先々で大型モンスターと遭遇し、これを掃討する。人々はこれに歓喜するものの、徐々に疎み始めていく。
それはヴォルフが強さを得た反動というべきか、他人とのコミュニケーションに興味を持てなかった所が原因といえるだろう。
大勢が狩りに参加する中でヴォルフ自身は単独行動。話し掛けたと思えば、小さな指示をするだけだった。
それでも救援を聞けば必ず駆けつけたし、犠牲を最小にすべく常に最善を尽くしてきた。
それでも他人はヴォルフを疎んで行った。
強力なモンスターを狩れば狩るほど、そのモンスターを天敵、もしくは仇敵としていた別のモンス
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