第三十一話 広瀬の秘密その六
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「馬に乗ること自体が好きなら」
「そうね。私の牧場でも馬を飼えば」
「馬はサラブレッドだけじゃない」
「道産子とかもいるから」
「それにロバもいればラバもいる」
馬とロバの合いの子のそれもだというのだ。
「馬といっても色々だ」
「そういうのも飼えばいいわね」
「飼うんだ」
「考えてみるわ。牛や豚もいいけれど」
それに加えてだというのだ。
「馬もいいからね」
「馬は結構大変だよ」
「大変でもいいのよ」
微笑んで返す由乃だった。
「動物と一緒にいるのってそれだけで楽しいから」
「そもそも動物が好きなんだ」
「そうだよ。それでね」
「それで?」
「これから何処に行くの?」
自分の前にいて手綱を操る広瀬にだ。由乃はしがみつきながら尋ねた。
「二人で乗ってるけれど」
「乗馬部に行こうか」
「乗馬部に?」
「そこのグラウンドで走ろうか」
乗馬部のグラウンドは言うまでもなく乗馬用だ。そしてそこはこの農学部の牧場と隣り合わせになっている。二人でそこに行こうというのである。馬に乗って。
「そうしようか」
「そうね。それじゃあね」
「牧場とグラウンドを走ろう」
赤兎に乗って。そうしようというのだ。
「今からね」
「そうね。ただね」
「ただ。何かな」
「私この後だけれど」
今だけでなくだ。由乃はこの後のことも話したのだった。
「自分でも馬に乗ろうかなって考えてるけれど」
「じゃあそのポニーとかに」
「それどうかしら」
「馬に乗った経験は」
「ないわ」
それはないとだ。由乃は広瀬に素直に答えた。
「殆どね」
「少しはあるんだ」
「あるけれどちょっとだけよ」
本当にだ。乗ったことはあってもだというのだ。
「だから。ないに等しいわ」
「そうなんだ。それじゃあ」
「それじゃあ?」
「大人しい馬を用意するよ」
由乃が乗れるポニーのだ。その中でもだというのだ。
「それに乗ろうか」
「そうした馬もいるのね」
「いるよ。馬は元々繊細で心優しい生き物だしね」
「あっ、それは知ってるわ」
「馬はね」
「そうよね。本当は人を踏み潰したりしないわよね」
「あの馬はまた特別だよ」
またあの漫画の馬の話になった。一時代を築いた漫画界の歴史に残る名作だ。あの漫画に出て来る馬はまさに馬の範疇を超えた馬だったのだ。
その馬についてだ。広瀬はやはりこう言った。
「異常だから」
「大きさだけでなくその気質もよね」
「人を自分から踏み潰したりはしないよ」
普通の馬はそうだというのだ。
「しかも何十人もね」
「相当大きかったしね」
「何メートルあったかな」
最早馬の大きさではなかった。
「十メートルはあったかな」
「飼い主も大きかったしね」
「あの人の漫
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