第三十一話 広瀬の秘密その四
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「車はいいわよ。広瀬君も車に乗るでしょ?」
「免許は持ってるよ」
実際に運転はできるとだ。広瀬も答える。
「けれど乗るのならね」
「馬の方がいいのね」
「やっぱりその方がいいよ」
微笑んでだ。広瀬は答えた。
「馬の方がね。馬はまた特別だよ」
「馬が本当に好きなのね」
「そうさ。けれど好きなのは」
普段は、特に剣士達との戦いにおいては全く見せない砕けた表情と口調でだ。広瀬は由乃に話していく。そこにあるものは堅苦しいものではなかった。
そのうえでだ。彼は話すのだった。
「馬だけじゃなくてね」
「牛や豚もよね」
「当然犬や猫もね」
そうした他の動物もだ。好きだというのだ。
「動物は全部好きだよ」
「それ最初に聞いて皆驚くことね」
「けれど君は驚かなかった」
「だって。ありだと思うから」
「そう思うからなんだ」
「ええ。それで馬だけれど」
由乃はまた赤兎を見た。そしてだ。
その巨大と言ってもいい姿を見上げてだ。こうも言うのだった。
「馬の牧場もあるわよね」
「うん、乗馬部もそこまではいかないけれど」
馬の数がそれなりにいてだ。そしてだというのだ。
「それに近いものがあるね」
「馬の牧場ね。実はね」
「実は?」
「うちの牧場相当広くてね」
それでだというのだ。広いが故にだ。
「馬も飼える余裕があるのよ」
「馬もなんだ」
「今いるのは牛に豚に鶏に」
こうした家畜の定番の動物達がいるというのだ。
「それに犬に猫」
「猫も」
「鼠獲り用にいるのよ」
「ああ、牧場には鼠も出るんだ」
「鼠は何処にでも出るわよ。それこそ湧いて出て来るから」
「湧いてって」
「牧場は食べるものも多いしゴミとか隠れる場所にも恵まれてるから」
それでだ。鼠はとりわけだというのだ。
「だからよ」
「鼠も多い」
「そう。だから猫も飼ってるのよ、しかも何匹もね」
「成程ね。そうなんだ」
「犬は番犬よ」
このことは言うまでもなかった。牧場にいるのなら必ずそうなる。どちらにしても由乃の家では猫も犬も本来の役目を果たしていると言える。
その犬についてもだ。由乃は広瀬に話す。
「他でもないね」
「熊とか出るから?」
「熊は。もう出ないかしら」
首を捻ってだ。由乃は答えた。
「それはね。けれどね」
「熊以外のが?」
「人間とかね。鶏の卵とか狙ってくるのよ」
そうした泥棒が出て来るというのだ。
「地元の悪ガキとか」
「そしてそうした連中に対して」
「犬は必要なのよ」
「そういう意味でも番犬なんだね」
「犬が何匹もいるとね」
どうなるかというのだ。
「それだけで何か怖いじゃない」
「確かに。犬が一匹だけでも怖いから」
「そこに何匹もいると銃を持っていても
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