第六十八話 足利義昭その五
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「青といえば。わかるのう」
「織田殿ですか」
「織田殿の色ですな」
「この青が何処まで拡がるかじゃな」
青い空を見つつだ。宗滴は言っていくのであった。
「朝倉まで届き。そうしてじゃ」
「青がさらにですか」
「さらに拡がりますか」
「天下も。覆うやもな」
宗滴は空に信長の大器を見ていた。そしてその大器が何時か自身とも矛を交えることを予感していた。その残り短い命の中でだ。
岐阜にいる信長にだ。長谷川がだった。
その彼がだ。こう信長に述べるのだった。
「義昭様が遂にです」
「ほう、越前を発たれたか」
「そのうえでこちらに向かっておられます」
「よいことじゃ」
そのことを聞いてだ。笑顔で言う信長だった。
そしてだ。その長谷川にこう告げた。
「では。手筈は整っておるな」
「はい、それでは義昭様を都にですね」
「御案内する。それでじゃが」
「それでといいますと」
「近江のことじゃ」
彼が今言うのはこの国のことだった。美濃の隣にあるだ。
「あの国じゃが」
「はい、まずは北ですが」
北のことからだ。長谷川は話した。近江のその北である。
「浅井殿は必ずこちらに味方して下さいます」
「お市のことからじゃな」
「それが大きいかと」
「猿夜叉は律義者じゃ」
長政のことも言う。彼はそうした者だというのだ。
「竹千代と同じくな。そして親父殿もじゃ」
「久政殿もですな」
「うむ、約束は守ってくれる」
この二人に対しては信長は万全の信頼を置いているのだった。だからこそ近江の北、浅井家については何の心配もしていなかった。しかしだ。
近江は一つではない。北があれば南もある。問題はその南だった。
信長はだ。長谷川にまた問うたのだった。
「南はどうじゃ」
「六角殿ですか」
「そうじゃ。あの家は前から浅井とは犬猿の仲じゃが」
それで何度も争ってきてもいる。信長はそのことを念頭に入れて話すのである。
「今回はどうじゃ」
「三好についた様です」
長谷川はこう信長に答えた。
「そのうえで我等とはです」
「対するつもりか」
「六角は二万です」
兵の数はだ。それだけだというのだ。
「無論我等の方が上ですが」
「その二万と戦をすればこちらも無事では済まぬな」
「そのことは如何致しましょう」
「何、大して考えることはない」
「ないというのですか」
「うむ、我等が来れば六角はどうする」
その六角の立場から考えて言うのである。
「どうする、六角は」
「我等は攻めるとすればです」
長谷川はどちらかというと政の者だ。しかし兵のことも知っている。
それでだ。信長にこう答えるのだった。
「我等の兵は五万になりますな」
「そこに徳川や浅井の兵が加わるな」
「では六万
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