第六十八話 足利義昭その一
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第六十八話 足利義昭
越前にだ。公家風の化粧に格好をしたやや恰幅のある男がいた。顔は全体的に四角い。
化粧も着ているものも気品や風格のある筈のものだった。しかしだ。
彼自身には気品や風格もない。何か道化めいた滑稽なものを醸し出している。そしてそれと共に妙な卑屈さや姑息さも滲ませる。その彼がだ。
細川、そして明智から一通の文を受け取っていた。それを読みだ。
こうだ。二人に対して言うのだった。
「尾張、いや美濃の織田信長がか」
「はい、そうです」
「あの尾張だけでなく伊勢や美濃まで併呑したです」
細川と明智はこう義昭に話す。
「その織田殿がです」
「義昭様を美濃にお招きしたいとのことです」
「そしてじゃな」
上座にいる彼、足利義昭はだ。二人の話を聞いてだ。
身を乗り出しそのうえでだ。あらためて問うのだった。
「余を将軍にじゃな」
「はい、文にはそこまで書かれてはいませんが」
「そのことも間違いなく」
「そうか。それではじゃ」
ここまで聞いてだ。義昭は実に機嫌のいい顔になりだ。
そのうえでだ。こう二人に言うのだった。
「その話受けようぞ」
「では美濃に」
「行かれるのですね」
「和田にも伝えよ」
義昭は実に嬉々として二人に話す。
「美濃に行く。そうしてじゃ」
「はい、そうしてですね」
「織田殿と」
「うむ、会おうぞ」
義昭は即断した。しかしだ。
ここでだ。細川と明智にだ。不機嫌な顔になりこんなことを言うのだった。
「だがのう。余を将軍にしてくれると思いこの越前に来たが」
「申し訳ありませぬ」
細川がだ。頭を垂れて義昭に謝罪の言葉を述べた。
そのうえでだ。彼はこう言うのだった。
「朝倉殿は北陸随一の力を持ち」
「しかも朝倉宗滴がおるな」
「だからこそ義昭様をすぐに都に案内して頂けると思ったのですが」
「当主があれではのう」
義昭は眉を顰めさせてだ。朝倉の主である朝倉義景について述べた。
「如何ともし難いな」
「義景様はです」
彼はどうなのかとだ。細川はさらに述べていく。
「都の文化やそういったものはお好きですが」
「戦やそうしたものはじゃな」
「はい、全く興味がなくです」
それが為にだった。
「動かれることはありませんでした」
「全く。期待外れもいいところじゃ」
義昭は手にしている扇子を閉じたままでせわしなく動かしながら言った。
「朝倉宗滴ならば一度動けば三好も松永もものの数ではあるまい」
「しかもです」
今度は明智が言ってきた。
「朝倉殿には盟友として浅井殿もおられます」
「あそこの主は若いながらかなりの者らしいのう」
「はい、まさに智勇兼備の方です」
明智は長政を
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