第六十七話 将軍の最期その五
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その二人をはじまりとしてだ。次々にだ。
義輝に襲い掛かり斬られる。しかしだった。
「できるだけ斬らせろ!」
「刀は斬っていると斬れ味が落ちる!」
「そこを狙え!」
こうした命令が出てだ。彼の刀を鈍らせようとする。だがそれはだ。
義輝は刀の切れ味が落ちたとみるとだ。すぐにだ。
その赤く塗れた刀は放り捨て後ろに刺している刀の中から一振り取ってだ。そうしてだ。
その刀でまた斬っていく。その刀の切れ味が鈍るとまただ。その刀を放り捨て新しい刀で斬る。そうしたことを繰り返してだ。彼は戦っていた。
その彼の奮闘にだ。三好、松永の足軽達はだ。
怯み動きを止めてだ。こう言い合った。
「ただ強いだけではないぞ」
「こうも刀を次から次に出されるとじゃ」
「これは勝てぬぞ」
「うむ、容易ではない」
「さあ、来るのだ」
義輝は怯んだ彼等に強い目を向けて言う。
「この足利義輝の最後の戦、見せてやろう」
「うう、下手に出ては死ぬぞ」
「これは到底相手にならん」
「どうすればよいのじゃ」
「このままでは」
「来ぬのか」
刀を構えたままだ。義輝は彼等に問うた。
「それならばこちらから行くぞ」
「何っ、来るというのか!?」
「負けるぞ、これでは」
「死ぬぞ」
足軽達は怯えた。義輝自ら来ると聞いてだ。しかしだ。
ここでだ。ある者が来た。それは。
「これは弾正様」
「御自身が来られたのですか」
「てこずっておるな」
松永だった。その彼が悠然と場に来たのだ。
見ればその手には刀さえない。軍配もだ。
その彼を見てだ。義輝は言った。
「御主が手を回したか」
「さて、何のことやら」
「三人衆は小心じゃ」
そのことはよく知っていた。義輝もだ。
その彼等が自ら攻めるとは感が得られなかった。しかしだ。
彼等はこうして来た。そのことについて考えてだ。
彼はだ。こう見たのである。
「御主が操ってそれでじゃな」
「操ったと言われますか」
「前から妙に思ってもいた」
その松永と対峙している。その中での言葉だった。
「御主は出自もはっきりせぬな」
「そういえばそうでしたか」
「それに御主のその具足に衣の色」
それもあった。
「周りの兵達もじゃ」
「それがしの衣や具足の色が何と」
「普通の色ではない」
こう言うのだ。
「闇の色、上杉の色とも違うな」
「確かに。それがしの色は黒ではありませぬ」
「闇の色、その様な色を着るものといえばじゃ」
そうした者達は何かというとだった。
「表の世界ではないな」
「そうだといえば」
「何を考えておる」
松永を見据えたままだ。義輝は問うた。
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