第二十九話 闇を払うものその十一
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「どちらが生き残るのか」
「俺ですがね。それは」
広瀬は今もその言葉を変えなかった。そうしてだ。」
お互いにぶつかり剣を交えようとした。互いに前に出た。だが。
そうしようとした瞬間にだ。世界が一変した。急に暗くなったのだ。
二人はその暗くなった世界を見てだ。まずはこう思った。
「夜!?まさか」
「もうなったのですか」
しかし違っていた。時間を見ればだ。
二人は同時にそれぞれの腕時計を見た。その時間は。
「まだ五時にもなっていない」
「それなのに何故」
「私がいるからだ」
この声がした。そうしてだ。
二人の前、もっと言えば広瀬から見て右手、高代から見て左手にだ。闇が出て来た。
そしてその闇からだ。あの男が出て来たのだった。
黒い大振りの日本刀を持った黒いスーツとシャツ、ネクタイの男がだ。こう言ってきたのだった。
「この私、権藤竜司がだ」
「権藤竜司といいますと」
その名前を聞いてだ。高代が言う。
「権藤コンツェルンの総帥の」
「そうだと言えば」
「政治家を目指されているそうですね」
「ただ政治家を目指している訳ではない」
「といいますと」
「私は日本の首相になる」
まさにだ。この国のだというのだ。
「そしてその為にだ」
「剣士になられたのですね」
「野心、そして理想の実現だ」
即ち首相になり日本を自分が理想とする国家にするというのだ。
「この太平洋において指導的地位にあり豊かで貧富がより少なく安定した国になる」
「悪い理想ではないですね」
「その政策も既にある」
高代の問いに答え続けるのだった。
「だからこそだ」
「剣士として戦われるのですか」
「その為に君達の前に来た」
高代と広瀬、二人の前にだというのだ。
「そうしたのだ」
「ではここで」
「俺達を倒すというのですね」
「降伏し剣を捨てなければだ」
まさにだ。その時はだというのだ。
「君達の運命はそれしかない」
「成程。ではです」
「俺達の返事を聞きたいですね」
「返答は何だ」
その返答についてだ。権藤は二人に問うてきた。
「君達の返答は」
「それはもう決まっています」
「俺もです」
余裕さえある穏やかな笑顔でだ。二人は権藤に向き合っていた。
そしてそのうえでだ。こう答えたのだった。
「私には夢があります」
「俺は是非共適えたいことがあります」
「だからこそ戦っています」
「剣士として」
まずはこうそれぞれ言う二人だった。
「だからこそ。降伏はしません」
「最後の一人になるまで戦います」
「そうか。では今もだな」
「はい、貴方とも戦います」
「そして勝ちます」
こう権藤に答えたのだった。ここまで聞いてだ。
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