第二十九話 闇を払うものその七
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「それじゃあ今はな」
「はい、じゃあケーキは今度ということで」
「そういうことで」
「悪いけれど今日のうちに全部食うさ」
中田はその残念そうな笑みでだ。二人に答えた。
「ケーキはな」
「日がもたないですか」
「だからですか」
「今日までなんだよ」
ケーキの賞味期限は厳しい。生もの故にだ。そしてそれはこの度もだったのだ。
「だからな。もう家に帰ったらな」
「ケーキをですか」
「全部召し上がられるんですね」
「ああ、夕食は和食だけれどな」
だがそれでもだというのだ。
「デザートはケーキの山だぜ:」
「しかも山ですか」
「ケーキの山って」
「楽しみっていえば楽しみだな」
こうも言う中田だった。
「俺は甘いものも好きだからな」
「そういえば中田さんって」
「ああ、甘いものもいけるぜ」
酒だけでなくだ。そちらもだというのだ。
「ただ。酒は日本酒はあまり飲まないけれどな」
「ビールとかワインですか」
「ああ、そっちだよ」
酒といっても飲むのはそちらだというのだ。
「そっちを飲むからな」
「ビールにワインですか」
「そうだよ。まあとにかく今日はケーキ祭りだ」
中田一人で行われるものだがだ。彼はあえてこう言ったのである。
「楽しみにして家に帰らせてもらうな」
「はい、それじゃあまた」
「さようなら」
二人はその中田に別れを告げてそれぞれの家に帰った。中田は家に帰ると本当に和食の夕食の後でケーキ祭りを行った。そうしてこの日の夜を過ごしたのだ。
次の日彼も上城達も静かだった。しかしだった。
広瀬が大学の講義を終えて厩舎に行こうとするとだ。その前にだ。
高代が来た。彼は温厚な笑みを浮かべながら広瀬に対して言ってきた。
「今のうちにと思いまして」
「競争相手を消しておく、か」
「はい。その剣士が手に負えない存在になるまでにです」
その温厚な笑みでだ。高代は温和な声で告げてきていた。
「ですから。貴方をです」
「俺を倒すっていうか」
「そうさせてもらいます」
「確かに俺もだ」
「貴方も?」
「倒すのならその相手が手に負えない強さになる前に倒す」
「それが合理的ですね」
「御互いにな。そうするべきですね」
独り言めいた口調からだ。広瀬は高代を見ての言葉に変えてきた。
「では。今から」
「貴方を倒します」
「それは俺の台詞です」
広瀬も負けてはいなかった。高代にこう返したのだった。
「貴方を倒してそのうえで、です」
「力を蓄えてですね」
「生き残るのは俺です」
最後の一人、それになるのはだというのだ。
「だからこそ。こう言わせてもらいます」
「わかりました。それではです」
「ここでは何ですね」
校舎を出たところだ。周りには人
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