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戦国異伝
第六十六話 漆塗りその九

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 礼の言葉を述べる。そうしてだった。
 信長は彼等にだ。さらに話すのだった。
「それでなのじゃが」
「その武田ですか」
「あの家は違いますか」
「天に二日なしじゃ」
 この言葉が出された。
「織田か、武田かじゃ」
「そして他の家ともですな」
「天下を目指す家があれば」
「そういうことじゃ。その場合は戦をするしかない」
 信長も腹を括っていた。
「そして下す」
「そうした家をですな」
「必ずや」
「そういうことじゃ。さて」
 ここまで話してだった。信長はだ。
 家臣達にだ。このことを問うた。
「やはり都からはじゃな」
「はい、相変わらずです」
「何も言ってきません」
「我等の望む返答は」
「では公方様はやはり」
 どうかと述べる彼だった。
「覚悟を決められているか」
「しかしこちら側からはですか」
「何もできませんか」
「うむ、できぬ」
 その通りだと述べる彼だった。残念な顔でだ。
 その話をしてだった。信長は今はだった。
 苦い顔でもだ。こうも述べた。
「あれこれ堂々巡りの考えをしても仕方ない」
「それではですか」
「今は」
「話はこれで終わりじゃ」
 とりあえずそれはだというのだ。
「何はともあれ武田との盟約はなった」
「だからですか」
「それでは今から」
「飲むとしようぞ」
 信長は屈託のない笑みになって述べた。
「酒でもな」
「わかりました。ではすぐに宴の用意を」
「それにかかりましょう」
「わしは茶じゃ」
 ここでもこれだった。やはり彼は飲めなかった。
「それを飲むからのう」
「ううむ、やはり酒はですか」
「殿は駄目ですか」
「うむ、やはり飲めん」
 その通りだと答える信長だった。
「飲めぬからといって恥ずかしいとは思わん」
「では茶をですか」
「我等もそれにさせてもらいます」
「別に気を使わなくてもよいぞ」
 彼等の言葉からそうしたことを察してだった。信長はこう返した。
「特にそれはじゃ」
「宜しいですか」
「特に」
「うむ、よい」
 また言う信長だった。
「気を使うな。御主等は御主等の好きなものを飲め」
「殿がそう仰るのなら」
「我等も」
「そういうことでな。しかし南蛮ではじゃ」
 その南蛮ではだ。どうかというのだ。
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