第七話 位牌その一
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第七話 位牌
帰蝶、即ち濃との婚礼の後暫くは平穏な尾張であった。だが信秀はその中でも戦に備えていた。
「次は清洲ですか」
「うむ、そのつもりじゃ」
こう平手に述べていた。
「それでじゃが。信長は今随分と兵を鍛えておるそうじゃな」
「はっ、鉄砲に長柄の槍を揃えております」
「鉄砲に長い槍か」
「それに兵は金で雇い常に戦えるようにしております」
平手は今信長がしていることをありのまま信秀に話した。
「どうもそれがしにはわかりかねます」
「鉄砲も槍もか」
「鉄砲はまだわかりますがあまりにも長い槍は」
「それはか」
「使いにくいと思います。また兵は減っておりますし」
「そうじゃな。金で雇う足軽ばかりではな」
信秀は平手の話を聞いて述べた。誰もが農家の次男や三男を足軽に使っていたのだ。それで戦は田畑の仕事が忙しくない時期に限られていたのだ。この時代の戦は行われる時期が決まっていたのである。
「それでは少なくなるじゃろう」
「信長様は何を考えておられるのでしょうか」
「そうじゃな。呼べ」
ここで信秀は言った。
「信長をじゃ。この古渡に呼ぶのじゃ」
「古渡にですか」
「一度じっくりと話をしたいとも思っていた」
こうも話すのだった。
「それでじゃ。呼ぶのじゃ」
「わかりました」
平手は信秀のその言葉に頷いてだ。そのうえで信長を彼の下に呼んだ。案内役は当然平手が務めそうして古渡に至ったのだった。
「ふむ、そういえばだ」
「何でしょうか」
古渡に行く途中である。信長は気付いたように案内役の平手に対して述べた。信長と平手の他には護衛の者達がいるだけである。それだけで古渡に向かっているのである。
「近頃父上とは話をしておらなかったな」
「はい、殿は相変わらずですから」
「相変わらずか」
「そうです。全く結婚されて少しは落ち着かれるかと思えば」
呆れた口調であった。
「それがなのですから。全く」
「ははは、わしは相変わらずだ」
「大殿の跡を継がれるのです。もう少し主としての確かなものをです」
「ふむ、そうだな」
「では今より。宜しいですな」
「何故そうなる」
何としても自分を型にはめようとする平手にいささか以上辟易していた。そうしてそのうえでだ。平手に対して言葉を返すのだった。
「わしは別にそんなことを言うつもりではないのだ」
「ではどう言われるおつもりだったのですか?」
「この国のことだ」
こう平手に言うのであった。
「尾張のことをな」
「どうされるというのですか?」
「父上に話をしよう。もうそろそろよい頃じゃ」
考える顔であった。信長は馬上でその顔になっていた。無論平手も馬に乗っている。そうしてそのうえで話をしているので
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