第二十九話 闇を払うものその二
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「そして約束は守る」
「政治家ってのは約束を破るものじゃないのかね」
「政治の場においてはそうだ」
権藤はこのことも否定しなかった。
「しかし己の為にそれをする政治家は三流だ」
「三流ねえ」
「公の為にそれをする政治家が本来の政治家だ」
約束を破ること、その背信についても違いがあるというのだ。
「だからだ。私はだ」
「ここでの約束は破らないんだな」
「正直君の命はどうでもいいのだ」
中田の命、それはだというのだ。
「君が戦いから消える。それが私にとっては大事なのだからな」
「成程ね。あんたの考えはよくわかったぜ」
「わかってくれたか」
「あんたの考えはな。しかしな」
「しかしか」
「あんたは俺のことはわかってないよな」
軽い口調で構えたままだ。中田は闇の中の権藤に告げた。
「それはそうだよな」
「私が君のことをわかっていないか」
「そうだよな。俺に戦いを降りろっていうんだな」
「その通りだ」
「生憎だけれどな」
この言葉を前置きにしてだ。中田はその権藤にまた言う。
「俺にだって意地と考えがあるからな」
「それならばか」
「俺は退かないぜ」
言葉だけは飄々としていた。その表面だけは。
「絶対にな。だから今もな」
「降伏しないか」
「闘うからな」
目は鋭かった。闇の中でも。
「絶対にな。そうするさ」
「わかった。それではだ」
権藤もだ。中田の言葉を受けた。そうしてだった。
闇の中で構えた。彼だけがわかるその中でだ。
上段に構えそうしてだ。その足を素早く動かしてだ。
そのうえで闇の中の中田に対して高速で動きながら闇の衝撃波を次々と放つ。そうしたのだった。
「これならばどうだ」
「攻めてきたんだな」
「例え闇の中でなくともかわせるものではない」
今の権藤の攻撃はだというのだ。
「しかも今は闇の中だ」
「見えないならか」
「到底かわせるものではない」
権藤は確信していた。そのことをだ。
「君は倒れる。ここでな」
「だろうな。それは」
「それはだというのか」
「何でもあんたの思い通りになるかっていうとな」
「違うか」
「人間ってのは思い通りにならない生き物なんだよ」
中田の声が言う。
「そういうものだからな。だからな」
「私の今の攻撃をか」
「かわすぜ」
余裕をだ。声に見せていた。
「それはすぐにわかるさ」
「ならばだ」
権藤も中田のその言葉を受けた。そうしてだ。
そのうえで闇の中での攻撃を繰り出し続けた。しかしだった。
彼も感じた。攻撃を幾ら繰り出してもだ。手応えがなかった。
そこからだ。彼は察したのだった。
「跳んだか」
「さてね」
あえてだ。答えない中田だった。
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