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戦国異伝
第六十六話 漆塗りその五
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「尋常でない数であるしな」
「はい、まるで館全体が燃えている様です」
「武田の赤で」
 赤い具足があまりにも多いのでそうなっていた。木である筈だがそれでもだった。
 兵の赤でそう見えていたのだ。それを見てだった。
 彼等は話すのだった。そうしてだった。
 彼等にだ。案内役の幸村が言ってきたのだった。
「ではこれよりです」
「うむ、それでだな」
「信玄公の御前にな」
 こんなことを話してだった。彼等はだ。
 その信玄の前まで来た。そこにはだ。
 武田の誇る二十四将がそれぞれ左右に控えだ。正面にだ。
 巨大な体躯を持ち厳しい顔の男がいた。威圧感が凄まじい。
 その彼を見てだ。二人は瞬時に悟った。
(間違いない)
(この男こそが)
 誰なのかをだ。内心で話していく。
(武田信玄)
(影武者などではない)
 影武者では感じられる筈のない凄まじい威圧感を浴びながらだ。彼等は確信していた。目の前のその男こそがだ。信玄であるとだ。
 それでだ。その信玄がだ。こう言ってきたのだった。
「織田家からの使者じゃな」
「はい、左様です」
「美濃から参りました」
 流石に臆することなくだ。彼等は応えたのだった。
「そしてそのうえで、です」
「文のことですが」
「我等と手を結びたいというのだな」
 信玄はその重厚な声で二人の言葉に応えた。
「そうじゃな」
「左様です。それで御返事は」
「どうなのでしょうか」
「それでだが」
 ここで言ったのはだ。信玄はだ。
 こうだ。二人に言ったのであった。
「これじゃな」
「?それは」
「我等の」
「そうじゃ。御主等の臆ってくれたものじゃ」
 上座から信玄は言ってくる。高さは少し信玄の方が高い位だ。しかしだ。
 その高さがあまりにも高く感じられた。まるで信玄が山の頂上にいる様にだ。
 それを見てだ。彼等は威圧感に負けそうになっていた。だがそれでもだった。
 伊達に織田家の重臣達ではなかった。それでだ。
 踏み止まり退かずにだ。信玄に応えた。
「あの茶器のですか」
「それについてですか」
「呉服頭巾もあったな」
 武田家への贈りものは茶器だけではなかったのだ。その他にも贈ったのだ。
 そのことをだ。信玄は言ってきたのである。
「どれも見事じゃ。特にじゃ」
「特に?」
「といいますと」
「箱じゃ。それを見せてもらった」
 こう言ってなのだった。そうしてだった。
 信玄は笑っていなかった。だがそれでも言うのだった。
「見事じゃ。織田の心を見せてもらった」
「箱に、左様ですか」
「そうだったのですか」
 平手も林もわかった。ここでだ。
 それでだ。こう言うのだった。
「あの箱は殿が仰ったものですが」
「だからこそですな」
「そう
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