第二十八話 使い捨ての駒その十二
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「それに打ち消そうにもね」
「難しいのね」
「あれだけの力だと」
剣士としてだ。上城はそこまで悟ったのだ。
「尋常なものじゃないよ」
「じゃあ中田さんはどうすれば」
「避けて下さい!」
これがだ。そのまま中田への言葉であり樹里への返答だった。
「さもないと!」
「ああ、わかってるさ」
中田もだ。上城の言葉を聞いていた。そしてだ。
彼は迫るその闇の衝撃波に対してだ。紙一重でだった。
かわした。すると残像をだ。闇は通り抜けたのだ。中田はまさに紙一重で闇を避けたのである。権藤はその彼を見てだ。こう言ったのである。
「見切りか」
「ちょっとやそっとじゃ使わない技だけれどな」
「使わないのではないな」
権藤は中田の言葉のそこを訂正させた。
「使えない技だ」
「使えない。そういうことか」
「そうだ。相当な技量がないと使えはしない」
見切りは武道の極意の一つだ。それ故になのだ。
「だが君はそれを使える。それ自体がだ」
「相当なものだっていうんだな」
「その通りだ。そしてだ」
「あんたも使えるんだな」
「見せていないだけだ」
それでもだ。使えるというのだ。
「必要ならば使う。その時にな」
「そうなのかよ」
「君の技量はわかった。ではだ」
権藤は再び上段の構えに入った。そうしてだ。
そこから今度は上から下だけでなく斜めにも左右にも振りだ。衝撃波を無数に出した。そしてそれでだ。中田を執拗なまでに攻撃してきた。
無数の衝撃波が中田を正面から襲う。だが。
中田はその衝撃波を見切りでかわす。一つ、また一つとだ。
そうしてかわしつつだ。彼は言う。
「まあ俺じゃないとな」
「かわせはしないというのか」
「受け止めると消えちまうな」
そのこともだ。中田は見抜いていた。
「それも下手にかわすとぶつかっちまう」
「だからこそ見切りを使ってか」
「それを使える俺じゃないとかわせないな」
見切りでの残像がだ。笑みを浮かべて言っていた。
「いや、これは凄いな」
「凄いのは君もだな」
「俺もかよ」
「かなりの実力の持ち主であることは認める」
それはだというのだ。
「そしてだ」
「そしてかよ」
「君の実力がどういったものかもわかった」
ただ実力を認めたのではなかった。その器も見極めたというのだ。
「充分にな。それではだ」
「ああ、それで次の攻撃は何なんだよ」
「それを今から見せる」
こう言って構え。そうしてだった。
剣をだ。一旦中段にして日輪の様に回した。すると。
闇が起こりだ。辺りを包んだ。その闇はまさに漆黒だった。
何も見えない。それは上城と樹里も同じだった。樹里はその完全な暗闇の中でだ。己の前にいる筈の上城に対してだ。こう問うたのである
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