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久遠の神話
第二十八話 使い捨ての駒その六

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「私はあの様な下衆ではない」
「で、あいつもだな」
「駒か」
「ああ、あいつもなんだな」
「あれはどうにもならない存在だ」
 壬本についてもだ。権藤は切り捨てた。
「駒でしかなかった」
「まあな。あいつはな」
「君はあれのことを知っていたな」
「認めなくないが知り合いだったんだよ」
 少し忌々しげにだ。中田は権藤に返した。
「あんな奴でもな」
「そうだったな」
「で、何度も忠告したんだけれどな」
「あの結末か」
「同情はしないさ。完全に自業自得だからな」
 壬本のそのどうにもならない気質を知っているからこその言葉だった。
「そのことについては何も言わないさ」
「そうか」
「あんたを責める気もないさ。あんな奴はああなるしかなかったんだ」
「冷たい、いや違うな」
「あいつを知ってるからな」
 だからこその言葉だというのだ。
「それはいいさ。しかしな」
「戦いのことか」
「あんたもやっぱりか」
「戦う」
 そうするとだ。権藤は中田に対して答えた。
「そして最後まで生き残る」
「首相になって日本を築く為にだってんだな」
「そうだ。だからだ」
 戦うというのだ。彼は。
「そして君もだな」
「ああ、そうさ」
 その通りだとだ。中田は権藤に臆することなく答えた。
「俺もやらないといけないことがあってな」
「そうか。ではだ」
「闘うってのかい?」
「いや、それはまだだ」
 今ではないというのだ。闘いはだ。
「そうではない。まだ聞きたいことがある」
「何だよ。それは」
「目的だ」
 それだった。彼が今度問うことは。
「君が戦うその目的は何だ」
「ああ、そのことかよ」
「そうだ。君が戦う目的は何だ」
 このことをだ。権藤は中田に問うていく。
「それは何だ」
「ちょっとな。言えないな」
 中田はあえて軽さを出して答えた。
「あんたは言えたが俺はな」
「言えないというのか」
「まあ。権力とか恋愛とかじゃないさ」
「そういうものではないか」
「生憎権力には興味がないんだよ」
 このことは事実だった。中田はそうしたことには興味がない。
 そしてだ。もう一つ出したことにはだ。いささか残念そうに答えた。
「で、恋人とかはな」
「いないか」
「本当に残念だけれどな」
 困った様な苦笑いでの言葉だった。
「いないんだよ」
「そうなのか」
「で、まあそういうことじゃないけれどな」
「だがそれでもか」
「俺も戦って生き残ってな」
 そしてだというのだ。
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