第二十八話 使い捨ての駒その四
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「それでも重いっていうんだね」
「俺が生きてるのと同じで他の奴も生きてるんだよ」
「他の人も」
「そうだよ。生きてるんだよ」
中田が今言うのはこのことだった。
「それでそいつの命を奪うってのはな」
「嫌だっていうんだね」
「重いからな。まあ御前にはわからないことだな」
「重い。そんな筈ないじゃないか」
壬本にとってはそうだった。まさにだ。
彼は自分だけだ。他人のことなぞ考えはしない。だからこそだ。中田が思い避けようとしていることがわからず感じもしないのだ。だからこそこう言えたのだ。
「自分を馬鹿にしている人に何をしてもね」
「じゃあ。戦うんだな」
「この力があれば」
黒い剣を見ながらだ。また言う壬本だった。
「きっと。僕は」
「こりゃもっときついお仕置きが必要だな」
中田は呆れ果てながらもこう言ってだ。そうして。
再び身構えてだ。一気にだ。
その両手の剣をそれぞれ一閃させた。剣に紅蓮の炎を宿らせながら。
そのうえで一閃させて壬本の後ろに出てからだ。こう言った。
「これでどうだ」
「うう・・・・・・」
「急所は外したぜ。ただ力は込めたからな」
「また。また僕を焼く・・・・・・」
「その炎に腐った性根消してもらえ」
再び紅蓮の炎に包まれる壬本を背中越しに見ながらだ。中田は告げた。
「浄化してもらうんだな」
「僕は。僕はまだ」
「これ以上やるんだったら五体満足じゃ済まないぜ」
警告をだ。中田はさらに強くさせた。
「片腕位斬るぜ。それでもいいんだな」
「僕はまだ。もう一度幸せになる為に」
「幸せってのはな。自分さえよければいいものじゃねえんだよ」
その自分しかない壬本への言葉である。
「それがわからねえ御前は破滅していくんだよ」
「僕は。手駒じゃない」
まだこう言うのだった。再び炎に焼かれながらも。
「動くのは僕なんだ。その僕がまた」
「もういいな」
壬本が再び動こうとしたその時にだった。不意に何処からか男の声がした。
そしてだ。壬本の手から剣が離れそうしてだ。
剣は壬本の頭上にあがった。そのままそこで刃を逆さに、刀身の先を彼の頭上に位置させてだ。そこから闇を出してだ。
壬本を闇の中に消した。そしてその闇も消えた時にはだ。何も残ってはいなかった。
中田はそれを見てだ。冷たい声で言った。
「だから言ったんだがな。捨てられるってな」
「完全に破滅したんですね。あの人は」
「ああ」
そうなったとだ。中田は上城に答えた。答えながらだ。
斬り抜いた姿勢から身体を立たせてだ。両手に剣を持ったままでだ。
そのうえで上城に身体を向けてだ。こう答えたのである。
「これでな。消えたぜ」
「消えたってことは」
「死んだ」
そうなったと
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