第六十五話 飛騨からの使者その七
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「この二つで戦う。私強い」
「それが南蛮の戦いか」
「騎士の戦い」
それだとだ。ヨハネス自身も言う。
「それを見せる」
「わかった。では御主のそれも後で見せてもらおう」
「そうしてくれると嬉しい」
これでヨハネスの名乗りも終わった。そうしてだ。
赤紫の長い衣を着た何処か浮世離れした黒髪の娘を見た。そうした娘もいたのだ。
その娘にもだ。信長は問うた。
「御主は」
「鏡です」
「鏡と申すか」
「はい」
その通りだとだ。その少女鏡も答える。
そうしてだ。彼女の方から言ってきた。
「私の術はです」
「仙術、いや違うか」
「そうしたものではなく生まれた頃から備わっているものです」
「ふむ。どういう術じゃ」
「念じてものを動かしたりあらゆる場所に瞬時に行ったりすることができます」
「縮地法じゃな」
信長はあらゆる場所に瞬時に移動できる術の名は知っていた。それですぐ述べたのである。
「あれを使えるのか」
「はい、こうして」
実際にその場から消えてすぐにだった。そこから少し離れた場所に出てみせた。そのうえ宙まで浮かんでみせる。そうして言うのだった。
「こうした術を生まれつき使えます」
「この娘はです」
拳がここで信長に鏡のことを話す。
「その力の為何かといじめられておりまして」
「人は自分にないものを持っている者を恐れるからのう」
「はい、それによってです」
「その娘は虐げられておったか」
「わしがそれを山城のある村で見掛け。見かねてです」
「引き取ったのじゃな」
「はい、そうです」
その通りだと答える彼だった。
「それで今こうして我等と共にいます」
「わかった。それでか」
「あの、それでなのですが」
鏡が怯える様にしてだ。信長に言ってきた。
「私は。信長様にお仕えして」
「ははは、よいぞ」
笑ってだ。信長は鏡を受け入れた。そのうえでこうも言うのだった。
「御主は他の者達と同じくわしの家臣じゃ」
「左様ですか」
「そうじゃ。力は戦の時にでも存分に使え」
「使っていいのですか」
「生まれつき持っていても後で備えても同じじゃ」
仙術や妖術と変わらないというのだ。
「全く同じじゃ」
「同じなのですか」
「御主の術は忍術や仙術とどう違う」
忍としての彼女にも述べてみせる。
「同じではないのか?だからじゃ」
「私の力もまた」
「よいぞ。織田家にいても」
「有り難うございます、それでは」
「さて、最後の一人じゃな」
鏡との話の後でだった。
信長は最後の膝まで丈のある黒い衣と同じく黒の装束を着た若い男を見た。髪は無造作に短く刈り髷をしていない。何処か強い目をしている。
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