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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#50 "melancholy of subーcast"
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こいつは誰にも覆えせねえ、絶対の真理ってやつさ。
俺ゃあ、それを散々味あわされたぜ。あの戦争ではよ……
















「んで?
テメエらはいってえ何処のどちら様方だあ?
まだ店え開ける時間じゃあ、ねえんだけどなあ」

棚に磨き終わったグラスを並べながら、俺は背中を向けたままそう答えてやった。
床をドカドカ踏み鳴らしながら入って来やがった"この店"では見慣れない連中に。

「ラグーン商会のゼロは知ってるな?
この店には良く立ち寄ってるらしいからな」

先頭に立つ男がイタリア訛りの強い英語でそう尋ねてくる。
俺は構わず、グラスを片付け続ける。

「ゼロ本人、若しくは居場所を知ってる奴でもいい。
店に来たら事務所まで連絡しろ。礼は弾む」

それだけ言って男は振り向いて出て行っちまった。
後ろにくっついてた4,5人の野郎どもも、一言も言わずにやや早足で付き従って出て行った。
肩越しにそれを確認した後、おれはカウンター上に置かれた名刺へと視線を滑らせた。

そこに書かれている会社の名前は予想通りの代物。
ロアナプラ(この街)に住んでる連中ならまあ、おいそれとは近付きゃしねえ。
ホテル・モスクワの隠れ蓑たる『ブーゲンビリア貿易』や、三合会の根拠地である『熱河電影公司ビル』程じゃねえにしても、充分恐怖の的には成りうる……

"あそこ"の連中なら店で見慣れてねえってのにも納得だ。
気取り屋の揃ったアイツらなら、こんなとこにゃあ来ねえか。

「………」

顎をポリポリ掻きながら視線を誰も居なくなっちまった店内へと向ける。
なんで急にあんな会話を思いだしちまったんだろうなあ、とボンヤリ考えてりゃ、こういう展開かよ……

さて、どうすっかなあ。 今更面倒事にゃあ関わりたかねえんだがなあ……

俺は店が開く時間まで椅子に座ったまま天井を眺め続けた。
名刺には一度も手を触れる事もなく………





















【11月3日 PM4:38】

Side ソーヤー

「………」

もう何時間こうしているのでしょう。
膝を抱えたままの姿勢で歩き出そうとも、何かをするわけでもなく、ずっとこうしている私。
鬱状態に入った時には確かにいつもこうして過ごしてはいるのですが、ちょっと現在は違う心境でございます。

………若干語尾が乱れているような気もいたしますが、あまり細かい事はお気になされませぬよう願い奉ります。
昨夜シェンホアに頼まれた"お仕事"を無事片付けた(わたくし)は二人の待つ
(まあ、待っているかどうかは判りかねますが)部屋に戻る事もせず、そ
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