第二十八話 使い捨ての駒その二
[8]前話 [2]次話
「何か違うのよね」
「うん、何か」
また話す彼等だった。そしてだ。
中田を見た。見ればだ。
彼は対峙している壬本に対してだ。右手の剣を向けた。そしてこう言っていた。
「じゃあな」
「死ぬ覚悟はできたかな」
「御前本当にな」
「何かな」
「何でもかんでも軽く考えてな」
そしてだというのだ。
「馬鹿にしてるんだな」
「馬鹿にしてる?何をだっていうんだい?」
「他の人も何事もな」
世の中のあらゆるものをだ。そうしているというのだ。
そしてだ。中田はその彼にだ。こうも言った。
「だから簡単に何かを殺すとか言えるんだよ」
「君は僕の敵じゃないか」
中田の今の言葉にはだ。こう素っ気無く返した壬本だった。
「それならそれもね」
「当然だっていうんだな」
「そうだよ」
「俺を殺すか」
「僕を馬鹿にするのなら」
それならばだというのだ。
「そして邪魔なら」
「本当に他人はどうでもいいんだな」
「他人?」
「そうだよ。俺以外にもな」
中田でなくともだとだ。彼は壬本に言ったのである。
「そうした考えなんだな」
「僕を馬鹿にして。認めないのなら」
言葉は変わらない。見事なまでに。
「皆いらないよ」
「だろうな。御前はそういう奴だよ。じゃあな」
「じゃあって?」
「手加減はしないからな」
中田は覚悟を決めた目で壬本に告げた。
「死なせるつもりはないけれどな」
「君がそう思っていても僕は」
「わかってるさ、殺したいんだよな、俺を」
「君も僕を馬鹿にしたから」
「確かにしたさ」
そのことは否定しなかった。中田は己を偽りはしなかった。
「しかしな。御前そうなるまで何やってきた」
「何って?」
「何やって何言われた。皆にも随分注意されたよな」
「皆僕を認めなかったんだ」
「違うんだよ。皆の御前の出鱈目さに呆れながらも注意してたんだよ」
中田が話すのが真相だった。壬本に関して言えば。
「それで何とかしたかったんだよ」
「僕を」
「そうなんだよ」
そうだというのだ。中田はこの時己の過去、壬本に関することを思い出しながら。
そうしてだ。彼に話したのである。
「だから皆。親御さんも何とかしたくて何度も怒ったんだよ」
「僕は手駒じゃない」
またしてもだ。壬本は否定する言葉で返した。
「動くのは僕なんだ。だから」
「話は聞かないってか」
「動くのは僕なんだ」
まだ言うのだった。
「その僕に言うなんて。そして否定するなんて」
「何につけてもそうした考えだからなんだよ」
「こうした考えだから」
「そうだよ。だから君だって」
「殺すってんだな」
「邪魔なんだよ、皆」
目はさらに血走る。見苦しいまでに。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ