第六十五話 飛騨からの使者その四
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「この者達の」
「これだけ異様だというのにですか」
「それで終わりですか」
「あの、幾ら何でもそれでも」
「いちいち風采で驚いては話がはじまらぬ」
そうだとだ。やはり平然として話す信長だった。
「それこそ飛騨だからじゃ」
「飛騨だから」
「どうだというのですか?」
「飛騨といえば両面宿儺ではないか」
「あの記紀に出て来るですか」
「表と裏にそれぞれ顔のある」
「そうじゃ。あの異形の神じゃ」
その神のことをだ。信長は話すのだった。
「あれではないか」
「流石にあの様な者はおりませぬ」
彼等の方から言ってきた。その異形の忍達からだ。
「我等とて人ですから」
「わかっておるわ。あの両面宿儺も記紀では邪神じゃが飛騨では善神だそうだな」
「はい、あの国ではそうなっております」
「飛騨においては」
そうだとだ。彼等の方からも返事が来た。
「もっとも我等は元々飛騨の者ではない者達ばかりですが」
「流れ者ばかりです」
「ふうむ。そこもまた違う様じゃな」
信長は彼等の言葉にまた納得して頷く。その彼等を見るとだ。
歳を取った男もいれば若い娘もいる。その彼等にだった。
信長は楽しげに微笑みだ。こう尋ねた。
「して御主等の名じゃが」
「はい、それでは名乗らせてもらいます」
「そうさせてもらいます」
彼等も応えてだ。そうしてだった。
まずは髪を立たせた若い男、何か先が色々と付いている鉄の杖を持っている男がだ。確かな笑顔でこう言ってきた。その忍装束は濃い赤だ。
「わしの名はからくりです」
「ほう、面白い名じゃな」
「この杖は特別で火を出したり鍵になったり網を出したり色々できます」
「ふむ、その杖を使って術とするか」
「左様です」
「それで名がからくりか」
話を聞きながらだ。信長はその名について問うのだった。からくりのその名についてだ。
「本名ではないな」
「一応真の名前はあります」
「それは何じゃ」
「弾吉といいます。ですがからくりでお願いします」
そう呼んで欲しいというのである。
「その名で」
「わかった。では御主はからくりじゃ」
「ではそれで」
こうしてまずはからくりからだった。そしてだ。
今度はだ。色が黒く瞼の重いあちこちが節くれだった男だった。薄緑の忍装束である。赤い髪がやけに縮れている。その彼はというと。
「あや取り」
「術は何じゃ」
「てっぽう投げる」
「元寇の折蒙古が使ってきたあれじゃな」
「わし、あれ使う」
「その他にもあるな」
「あと糸も使う」
それも使うというのだ。
「糸に気を張ったり絞めたりする」
「ふむ。御主も面白い術を使うのう」
「宜しく」
「うむ、こちらこそな」
あや取りについても話される。そしてさら
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