第六十五話 飛騨からの使者その三
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「御主は嘘を吐けぬからのう」
「それがし嘘は嫌いでござる」
実際にそれは言う柴田だった。そもそも彼は嘘に嫌悪を見せている。それでだ。彼は信長に対してだ。こんなことを言ったのであった。
「戦に謀は付きものでありますが」
「それでもじゃな」
「はい、好きではありませぬ」
「しかし飛騨の者達は見てみたいか」
「正直に申し上げましょう」
ここではだ。柴田は正面から言った。
「わしもどういった者達か見てみたいです」
「ははは、やはりそうか」
「織田家には変わり者が多いですが」
「そう言う権六殿もなあ」
「うむ、堅物じゃがあまりにも堅物じゃからのう」
「源平の時代におる様なな」
「困った御仁じゃからな」
前田や佐々、中川といった面々が口々に話していく。
「熊谷の様にな」
「一騎打ちはせぬがな」
「それでも古風な御仁じゃ」
「どれだけ古いのやら」
こう話す彼等だった。それを聞いて柴田自身もだ。
彼等にだ。むっとした顔で言うのだった。
「傾奇という方がおかしいわ。古いなら古いでよかろう」
「そのまま突き進むか」
「正しいと思えばそうします」
今の柴田の言葉にはだ。柴田は謹厳に返す。
その柴田の話を聞きながらだ。信長はふとだ。傍に来た林に尋ねた。
「爺と勘十郎はおらんのか」
「御二人共政に出ておられます」
「ふむ。それでおらんのか」
「はい、城を出ておられます」
「一番口煩い者がおらんな」
平手のことだった。彼に他ならない。
「いや、それは寂しいのう」
「確かに。あの御仁はおられると非常に口喧しいですが」
「おられぬと何か妙に寂しいですな」
「それだけでかなり」
「全く。奇妙な奴じゃ」
信長は腰掛けたままだ。そのうえで袖の中で腕を組みだ。こう言うのだった。
「あれだけおらんと寂しい者はおらん」
「まあおられるのは仕方ありません」
「今はそれよりもです」
「その飛騨者達です」
「その彼等を待ちましょう」
「来ることを」
「さて、武田にいる真田十勇士にも負けぬ者達というが」
信長は伝え聞く話をここで言った。
「さて、どういった姿形に術か」
「それですな、やはり」
「十勇士も相当なものの様ですが」
「それに比肩するとなると」
「まことにどういった者達か」
「そろそろですな」
滝川が言った。
「その者達が来ます」
「さて、では見るとしようか」
信長はさらに楽しげだった。そうして彼等が来るのを待つのだった。
するとだ。その彼等が来た。それは。
まさに異形の者達だった。その格好はそれぞれ違いだ。尚且つ。
傾くどころではなかった。一見するととてもこの国の者には見えない、そこまでの者達だった。その彼等を見てだ。信長はまずはこう彼等に問うた。
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