暁 〜小説投稿サイト〜
戦国異伝
第六十四話 焼きものその十

[8]前話 [2]次話

 その闇の中でだ。義輝は声も強張らせて言うのだった。
「妖術でも使うのは」
「若しや」
 明智もだ。その可能性を否定しなかった。
「さもなければ今も織田家で信長殿を助け家中を平手殿と共にまとめておられる信行殿を惑わせ二度も謀反を行わせるなどということは」
「できぬな」
「ましてや斬られそうになると急にその身を消したそうです」
「ではやはり」
「はい、その津々木という者は間違いなく妖の者」
 人であろうともだ。それだというのだ。
「闇の衣というだけでかなり怪しいでしょう」
「そうであろうな。しかしその闇の衣の話はじゃ」
 義輝はその闇の衣について述べた。
「わしもはじめて聞いた。織田以外には出てはおらぬな」
「はい、どうやら」
「まことに何じゃ、その津々木と申す者は」
 義輝はとかく彼について疑念を抱いた。
「織田家に害を為す者なのは間違いないが」
「その頃でしたら確か」 
 細川が言ってきた。
「織田殿は駿河の今川殿、美濃の斉藤殿を敵に回しておられましたが」
「そのうちのどちらかであろうか」
 義輝は袖の下で腕を組み述べた。
「それで策を仕掛けてきたのであろうか」
「美濃でないことは間違いありません」
 すぐにだ。明智が述べてきた。
「それがしは元々美濃の出でありますが」
「そうした者は知らぬか」
「はい、闇の衣すらありませんでした」 
 闇は不吉そのものだ。それを着る者すら美濃にはいなかったというのだ。
「美濃の何処にもいませんでした」
「では駿河か」
「いえ、駿河にも聞きませぬ」
 明智は今川の手の者でもなかったというのだった。
「そうした奇怪な服を着て奇怪な術を使う者なぞ」
「そういえば今川はじゃ」
「あの方は京風、雅を好まれるお方で」
 今は出家してこの山城の寺に入っている。その義元はどうかというのだ。
「妖の術は好まれませぬ」
「左様ですな。それがしも駿河には行ったことがあります」
 細川もここで話してきた。
「今川殿はあくまで清流、忍は使われますが異形の術は好まれませぬ」
「そうじゃな。今川義元の師は雪斎じゃ」
 今は信長の家臣になっている彼はというと。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ