第二十七話 愚劣な駒その七
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「ギリシアと比べてもです」
「ギリシアは普通位か?」
「美味しいと思います」
「そうなのか」
「果物や乳製品、そして海産物もあって」
食材は豊富だというのだ。
「それにです」
「それに?」
「他には」
「トマトに。オリーブもありますから」
この辺りはまさに地中海らしかった。
「ですから。美味しいです」
「そうか。それでか」
「美味しいんだね」
「そうです。ですがイギリス料理はです」
「確か碌に調味料もなかったな」
「食材も乏しかったね」
「だからまずいのです」
まさにそれ故にだというのだ。乏しい食材を貧しい調味料で料理したからこそだというのだ。イギリス料理がまずくなる根拠も確かにあるのだ。
「しかしこのカレーはですか」
「そのイギリスからだ」
「生まれたものであってもですか」
「こうしてアレンジされたものだ」
和風にだ。そうなったというのだ。
しかしそれでもだった。ここでまた言う工藤だった。
「少なくとも日本の味にはなっている」
「御飯と合わせてですね」
「そうなるか。そうか、だからか」
「このカレーは和食だと思います」
「とろ味があって御飯にも合う」
「イギリスには御飯はないですから」
イギリスの主食はパンだ。このことは言うまでもない。
「やはり」
「そうか。言うなら肉じゃがと同じだな」
「肉じゃが?あの日本のお料理ですか」
「あれも海軍からはじまった料理だ」
工藤は肉じゃがもそうだとだ。聡美、そして高橋に話した。
「イギリスの料理からな」
「えっ、あれがですか!?」
高橋は肉じゃがを頭の中で思い出してからだ。怪訝な顔になって工藤に問い返した。
「あの肉じゃががイギリスの料理だったんですか」
「意外に思うな」
「どう見ても和食じゃないですか」
そしてこう言うのだった。
「お醤油にみりんを使って」
「そうですよね」
それは聡美も同意だった。
「私もあれは好きですけれど」
「そうだよね。どう見てもさ」
「はい、あれは」
「和食ですけれど」
「何故イギリスが」
「あれはだ」
本気で首を傾げさせる二人にだ。工藤は落ち着いた様子で答えた。
「元はビーフシチューだった」
「あれがですか?」
「ビーフシチューだったのですか」
「そうだ。食材は同じだな」
「ええ、まあ」
「言われてみると」
「ジャガイモに肉にだ」
まずは肉じゃがを肉じゃがにしているこの二つの食材だった。
「それに玉葱に人参だ」
「まあそこに色々入りますけれどね」
「糸こんにゃく等も」
「しかし元はそうしたものだ」
ジャガイモに肉、そこに人参や玉葱だというのだ。
「ただ。シチューではなくだ」
「お醤油にみりん」
「それで味付けをして、ですか」
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