第二十七話 愚劣な駒その二
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そして二人は聡美にこう言ってきたのだった。
「ところで。昼はもう食べただろうか」
「それはどうかな」
「いえ、それは」
まだだとだ。聡美は答えたのだった。それを受けてだ。
工藤がだ。彼女に穏やかな声で言ってきた。
「ならだ。少し案内したいところがあるが」
「何処でしょうか。そこは」
「丁度八条町の湊に自衛艦が停泊しに来ている」
「海上自衛隊のですか」
「そうだ。そこで昼をどうか」
「軍艦の食事ですか」
「こう言っては何だが美味い」
工藤は微笑みを浮かべて聡美に話した。
「海上自衛隊の料理はな」
「そうなのですか」
「だからどうだろうか」
また言う工藤だった。
「三人で今から」
「御言葉に甘えて宜しいでしょうか」
「だから誘った」
工藤は微笑みのまま聡美に再び告げた。
「そうでなければ誘わない」
「それでは」
「あちらにとってもいい話だ」
工藤はこんなことも言った。
「お客さんが来ることはな」
「いいのですか」
「自衛隊の広報になる」
「ああ、それですね」
工藤の今の話を聞いてだ。高橋も話に入って来た。
「広報ですか」
「丁度その艦はその為にも来ているしな」
「広報の為ですか」
「自衛隊にとって広報は極めて重要な仕事の一つだ」
自衛隊のイメージアップ、それに募集も兼ねている。つまり組織にとっての死活問題なのだ。何もしなくても人が来る様な組織なぞ滅多に存在しない。
それでだ。また言う工藤だった。
「人に知られてこそだ」
「自衛隊は成り立つからですか」
「だから今広報をしている」
そうしているというのだ。その艦は。
「自由に入っていいそうだ。勿論軍事機密はあるが」
「では。お願いします」
「しかもその艦には俺の同期もいる」
工藤は微笑みながらまた言う。
「話が通じる。では行こう」
「わかりました」
「では俺も」
聡美に続いてだ。高橋も言ってきた。こうしてだった。
三人で港に向かいその自衛艦の前に来た。その艦はというと。
グレーで塗装され全体的に優美な姿をしている。艦橋は案外低い。
そして前に円形の砲塔があり砲も突き出している。他にはミサイルランチャーにヘリが停まる場所もある。艦橋の上を見ればレーダーもある。
大きさはかなりのものだ。百メートルを優に超えている。その艦を見てだ。
聡美はだ。艦を見上げながら言った。
「大きいですね。これだけの艦は」
「これだけの艦はギリシアにはあるだろうか」
「ないです」
こう工藤に答えたのである。
「とてもです」
「そうか。ギリシア海軍にはないか」
「はい、ないです」
艦を見上げたままの言葉だった。
「ここまでの船は」
「そうなのか」
「流石ですね」
こ
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