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久遠の神話
第二十六話 壬本という駒その十二
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言ったか。そうした言葉は」
 壬本がいつも言っていただ。そうした言葉はだというのだ。
「確か。ネットの用語ではだ」
「厨ニ病です」
「そうだったな。そう呼んだな」
「要するに愚かで未熟な者です」
「あの男はまさにそれだな」
「既に二十歳になっていますが」
 この場合は年齢は関係なかった。それも全く。
「あの通りとは」
「つける薬がないというのはあの男のことを言うのだ」
「ですね。まさにその通りです」
「そうした者にも程度や種類があるがだ」
「あの様な者ともなると。どうも」
「どうにもならない」
 完全にだ。壬本を見捨てている言葉だった。
 そして見捨てたその目でだ。権藤は己の執事に告げた。
「見ることは見る」
「そうされますか」
「手駒としてな」
 観察する目だった。実験材料をだ。
 そしてその実験材料を語る言葉でだ。権藤は語っていく。それは冷淡というものではなかった。完全に『もの』を見ている、そうした目であった。
 その目でだ。彼はまた言うのだった。
「ではだ」
「はい、それでは」
「闇の力を見極めよう」
「そうされますか」
「駒は駒だ。しかも何の使い道もない駒だ」
「せめて人の役に立つ者であればよかったのですが」
「あれ位しかない」
 廃棄物を再利用する目にもなっていた。今の権藤は。
「では。使い捨てにしよう」
「ですね。最後まで見て」
 執事も権藤に応えそうしてだ。静かに一礼した。
 そしてそのうえでだ。権藤は執事が出すグラスにワインが注がれるのを見ながらだ。それからそのワインを飲んでだ。今は酒を楽しむのだった。


第二十六話   完


                         2012・3・7
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