第二十六話 壬本という駒その十一
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「あのですね。つまりはですね」
「あいつが悪いんですよ」
「急にもう一人の剣士が邪魔してきて」
「それで私の用ができて」
「あの、今度はです」
「頑張ります」
嘘と自己弁護の言葉をだ。垂れ流していた。
そのうえでまだ言う。今度の言葉は。
「それでなんですが」
「今度は上手にやります」
「あの、お力をまだ」
「使って宜しいでしょうか」
「構わない」
そしてだ。権藤はだ。こう壬本に返した。
そのうえでだ。彼に告げたのである。
「では頑張ってくれ」
「いいのですか」
「君には期待しているのだよ」
暖かいふりをした言葉だった。
「だからだ」
「では次も」
「ある。心配しないことだ」
こう壬本に言ったのである。
「それではこれからもだ」
「はい、頑張ります」
自分が助かったことにほっとしながらだ。壬本は権藤に応えた。
そしてだ。こう彼に言ったのである。
「次は絶対に剣士を倒してきますので」
「そうしてくれ給え」
権藤は壬本にこう返してだ。そのうえでだった。
彼が出て行くのを座ったまま見送った。そしてそれからだ。
傍らに控える執事にだ。こう言ったのだった。
「手駒にしてもだ」
「そうですね。あれは」
「どうにもならないな」
そうした手駒だというのだ。壬本は。
「使えないにも程がある」
「まさか。相手から背を向けて逃げるとは」
「そうするだろうとは思っていた」
「実際にですか」
「ああした人間は己のことしか考えず自己保身しか頭にない」
「そしてその己を守ることもですね」
「無能さ故にできない」
壬本はだ。そうした輩だというのだ。
「所詮はな」
「そうですね。では」
「次の戦いで終わりか」
「手駒であることもですか」
「あれでは。闇の力の本質を見極めることもだ」
「できませんね」
「無能過ぎる」
壬本をだ。こう言い捨てる権藤だった。
「伊達に高校で全てを失っただけはある」
「バイト先でゴロツキと組んで女の子の個人情報を渡したそうですね」
「僅かでも良識のある者ならしない」
「女の子に実害が及びますから」
「実際に及びそうになったらしいな」
「はい、危ういところでした」
中田と同じ話をだ。執事は権藤に話したのだった。
「バイト先の店長が動かなければ女の子はゴロツキ達に何をしていたのかわかりません」
「何でも店を守る為に仕方なくしたとか言ってたらしいな」
「はい、自分が卑怯者になる道を選んだとか」
「意味がわからないな」
権藤は憮然としてこう述べた。
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