第六十三話 岐阜その十一
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「観ていてもな」
「では殿はこれからも」
「狂言も観るし能や田楽もじゃ」
どれも信長の好きなものである。信長は芸能好きでもあるのだ。
「観ていくぞ。では月餅はな」
「有り難く頂戴致します」
実際にだ。沢彦はその月餅を受け取ってすぐに口に運んで美味そうに食べる。そしてその彼にだ。信長はまた告げたのだった。笑いながら。
「して附子じゃな」
「はい、それも宜しければ」
「わかった。瓶に入れて渡そう」
「有り難き幸せ」
「尾張に変える途中で割らぬ様にな」
「ははは、それはもうわかっています」
沢彦もそのことには笑って返してだった。そのうえでだ。
水飴を受け取りだ。そのうえで意気揚々と尾張に戻るのだった。その彼を見送ってからだ。
こんなことをだ。村井に言うのだった。
「水飴ものう」
「和上に贈られたあれですか」
「前より誰もが舐められる様になった」
「それでもですか」
「民百姓の誰もが気前よく舐められるようにせんとな」
「甘いものを誰もがですな」
「そんな世の中にしたいものじゃ」
その為にもだ。天下を平定するというのだ。
「是非な」
「ですな。しかしです」
「甘いものというとじゃな」
「果物ならあります」
それはあるとだ。村井はそこから話した。
「蜜柑や柿、無花果に琵琶に」
「それに梨じゃな」
「西瓜もあります」
「甘いものは案外多い」
少なくとも日本はだ。そうしたものにも恵まれていた。そうした意味で日本は幸せであった。だがそれでもだとだ。信長は言うのである。
「水飴にしろ他の菓子にしてもじゃ」
「誰もが気前よく召し上がれる様に」
「饅頭もそうじゃな」
「甘い饅頭といいますと」
村井はその饅頭について述べた。
「砂糖が必要ですな」
「砂糖はそうそう容易には手に入らぬ」
「ですな。厄介なことに」
「南の方から取り寄せるしかない」
「ですがそれは」
「存外金がかかる」
それが問題だというのである。信長はそのことについても考えていた。
それでだ。こうも言うのだった。
「果物以外にも。誰もが甘いものを食える様にせんとな」
「水飴は多く作ればそれだけ安くなりますが」
「それはそれでいけるか」
「はい、それは」
「そうじゃな。じゃが多く作るものはじゃ」
水飴だけではないとだ。信長は言った。
「醤油にしろ酢にしても酒にしてもじゃ」
「あらゆるものを多く作ればですな」
「それだけ安く多く出回る」
それがいいというのだ。これも政だった。
政のことを考えながらだ。さらにだった。
「あと。そうじゃな」
「何かありますか」
「少し落ち着いたら尾張に行く」
「尾張にですか」
「美濃もそうじゃが考えがある」
こう言ってだった。
「そうし
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