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戦国異伝
第六十三話 岐阜その八
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「織田の色は青ですから」
「青は東じゃな」
「はい、そうなります」
「ではわしは龍王の中でも首座の東海龍王か」
「そうなるかと」
「ははは、わしも大きくなったものじゃ」
 通具の頓知めいた言葉、決して媚ではないそれを受けてだ。信長は笑ってだ。
 そのうえでだ。こう言ったのである。
「尾張の蛟龍から。東海龍王とはな」
「して我等はです」
「では小龍達よ」
 にやりと笑ってだ。信長は家臣達をこう呼びだった。
「それぞれの責を果たす様にな」
「畏まりました」
「それでは」 
 その小龍達も応えてだった。信長に深く頭を下げそれぞれの仕事に戻った。この話から数日後だ。稲葉山城に一人の僧侶が来た。
 小柄で眉も白くなっている。顔は皺だらけだ。だが背筋はしっかりとしている。その僧侶が来てだ。城門を護る足軽達に問うたのである。
「信長様はおられるでしょうか」
「むっ、和尚様ですか」
「来られたのですか」
「はい、御呼びに応じて参りました」
 こうだ。小柄な老僧は言ったのである。
「この沢彦、信長様に」
「殿でしたら本丸におられます」
「ではすぐに」
 足軽達も礼儀正しくだ。その沢彦に一礼してだ。そうしてだ。
 彼等に案内されて信長の前に来た。信長は本丸の己の屋敷の庭で弓の鍛錬をしていた。だが足軽達に言われてだった。
 顔をだ。彼等、そして沢彦に向けてだ。笑顔で言うのだった。
「おう、来たか」
「はい、遅れて申し訳ありませぬ」
「いやいや、思いの他早かったぞ」
 信長は弓を収めてだ。そのうえで沢彦に対して述べる。そうしながら彼の傍に来た。
「尾張からよくぞ来た」
「有り難きお言葉」
「してじゃ。話じゃが」
 信長の方からだ。沢彦に対して言う。
「是非和尚の知恵を借りたい」
「拙僧のですか」
「そうじゃ。般若湯はよいか」
 酒のことだ。僧侶は酒をこう呼んで飲んでいるのは周知の事実だ。
「越後から贈られてきたものじゃ」
「越後といいますと」
「そうじゃ。上杉からな、祝いの文と共に贈られてきた」
「殿はお酒は」
「飲めぬがせめてもの心尽くしと書いてあった」
 文だ。そうしたことも書かれていたというのだ。
「わし自身には茶器を贈ってくれたわ」
「上杉殿も茶を嗜まれている様で」
「その様じゃな。それではじゃ」
「拙僧は般若湯は飲みません」
 沢彦はそれについてはあっさりと述べた。
「申し訳ありませんが」
「では茶にするか」
「はい、それなら是非」
「わかった。それでは茶室に赴こうぞ」
 こうしてだ。信長は沢彦と二人で本丸の茶室に入った。城に入りだ。信長がすぐに設けさせたものだ。その中に二人で入りだ。信長は沢彦に自分が淹れた茶を差し出し彼が一口飲んでからだ。こんなことを言った
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