第六十三話 岐阜その五
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「己を認めてくれる者の為に動く」
「だから殿もですか」
「公方様の為にあえて兵を動かされる」
「そうされますか」
「うむ、公方様の返事があればじゃ」
それですぐにだというのだ。
「上洛するぞ」
「わかりました。ではこれまで通り何時でも出陣できる様に」
「用意しておきます」
「頼むぞ。差し当たっては武田と手を結び」
その同盟でとりあえずの平穏、東からの脅威を抑えてだった。
「政をしていくとしよう」
「殿、そういえばですが」
ここで言ったのは森だった。森長可である。
「飛騨の三木殿ですが」
「むっ、飛騨か」
「どうされますか?」
「ふむ。飛騨じゃな」
飛騨のことを言われてだ。信長は気付いた様な顔になった。
そうしてだ。こう答えるのだった。
「とりあえずあの国にも文を送るか」
「そうされますか」
「放っておくと後で厄介なことになりかねぬ」
そうなるより前にだとだ。森に言うのである。
「そのうえで攻めるなり何なり考えようぞ」
「わかりました。それでは」
「飛騨。あそこはまさに山じゃ」
もっと言えば山しかない。そこまで険阻な地であることはよく知られている。
従って貧しく石高も低い。あるのは木ばかりだ。だから信長もだ。飛騨については特にこれといって執着を見せずそうして語るのだった。
「どうもじゃ」
「興味が湧きませんか」
「手に入れても特に豊かになる訳でもなく」
薬にはならないというのだ。
「また新たな敵を作る訳でもないしのう」
「誰も飛騨なぞ攻めませんし」
「あの様な山ばかりの国は」
「それで兵を送るのもどうかですね」
「ですから」
「そうじゃ。兵を送るのもあれじゃ」
信長は家臣達にもこう述べた。
「まあ三木がわしに帰順するのならそれでよい」
「では文を送りですね」
「そのうえで飛騨は」
「さて。どうなるか」
今一つはっきりしない、信長にとっては非常に稀な感じだった。
「あの国はな」
「では飛騨にもですな」
「文を送られますか」
「そういえば飛騨にも忍がおったな」
信長は飛騨についてこんなことも述べた。
「久助か小六につけるか」
「飛騨の忍ですか」
彼等のことを聞いてだ。滝川も首を少し捻りながら述べたのだった。
「それがしもあの者達については」
「知らぬか」
「はい、よくは」
そうだというのだ。
「ただ。噂では十勇士と同じく」
「真田に従うあのか」
「はい、その真田幸村の配下のです」
「あの者達と同じというと」
「異能の者達だとか」
そうした忍達だというのだ。
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