第一話 水の少年その十四
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「北朝鮮なのよ」
「北朝鮮ってあの」
「そう、あの国」
言わずと知れた究極の独裁国家だ。共産主義というが世襲でありしかも一人の人間だけが贅を極めている。そうした国であるのも最近まで広く知られていなかった。
「あの国の教育があそこの理想なのよ」
「北朝鮮が理想って」
「おかしくない筈がないでしょ」
母は少し忌々しげに言う。
「それはわかるわよね」
「僕でもね」
こう返す上城だった。
「あの国がおかしいのはね」
「そのおかしな国をだ」
父は顔を顰めさせて我が子に話す。
「理想としていたからな」
「じゃあおかしいに決まってるんだね」
「全員がそうじゃない」
父もそれは確かと言う。
「しかしだ。それでもな」
「学校の先生にはおかしな人が多いんだね」
「日教組があるとな」
どうしてもだ。そうなるというのだ。
「そうなる」
「じゃあこの先生も」
その記事を見てだ。また言う彼だった。
「そういう人なんだね」
「あれ?ひょっとして」
母がまた話に加わってきた。
「何か暴力教師が通り魔やろうとして逮捕されたって」
「うん、それ」
まさにそれだと答える。母に対して。
「本当にその人だから」
「何か中学校の先生だったわよね」
「知ってるんだ」
「夜のニュースで見たから」
それで知ったというのだ。その元教師のことを。
「酷い先生もいるものだってね」
「うん、本当にね」
上城は自分がその教師に会ったことはあえて隠して応える。
「それはね」
「生徒に普通に暴力振るって一切お咎めなしだったなんて」
「通報されるまではそうだったみたいだよね」
「それ自体がおかしいわよ」
母は自分のテーブルのところで首を捻る。
「そう思うと。あんたの通ってる学校は」
「小学校から。そんなことはなかったから」
「幸せだったわよね」
「というかそんな先生がいること自体が」
「信じられないの?」
「普通の社会でそうした人って存在できるの?」
こう両親に問うとだ。その答えは。
「そんな筈ないだろ」
「絶対に問題になるわよ」
こうだった。当然の答えだった。
「そんな人間普通にクビだぞ」
「警察来ない筈がないから」
「そうだよね。幾ら何でもね」
「それで問題にならない方がおかしい」
「それまで問題にならなかったのがね」
これが普通の社会である。教師の世界の方がおかしいのだ。
それでだった。二人はまた我が子に話した。
「いいか、そういう人間には絶対にな」
「なったら駄目よ」
「そうした人間は教師じゃない、反面教師だ」
「真似をしたらいけない人だから」
「そうなんだね。普通の世界じゃ」
どうしてもそうなることだった。そんな話をしてだ。
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