第二十六話 壬本という駒その二
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「私は日本の首相になる男だ。しかしだ」
「何の役にも立たない輩は日本には不要ですね」
「不要な駒は使い潰して終わりにする」
またこう言ったのだった。
「そうするからな」
「それが日本の為になりますね」
「不要な人材もいる」
そのだ。壬本の如くだというのだ。
「そうした人材でも少しでも役立てるならだ」
「駒ですか」
「そうして使い捨てにするだけだ」
「左様ですか」
「そうだ。そしてだ」
ハンバーグを食べつつだ。権藤は今度はこう言った。
「このハンバーグだが」
「味がよくないでしょうか」
「いや、実に美味い」
味の問題ではなかった。ここで言うのは。
「とてもな。いつも通りシェフ脳では流石だ」
「では一体」
「ハンバーグはビスマルクの好物だった」
プロイセン、ドイツ帝国の宰相である。鉄血宰相としてだ。ドイツの舵を取っていた人物だ。
「あの彼のな」
「ビスマルクですか」
「ビスマルクはドイツの為にあらゆることをしてきた」
「時として謀略もですね」
「そうだ。手段を選ばないと言えるがだ」
だがそれがだとだ。権藤は言うのである。
「しかしそれでもだ」
「それがドイツの為になっていましたね」
「だからいいのだ。政治家は国家の為にはだ」
「時として手段を選ばないこともですね」
「いいのだ」
それもまた、というのだ。
「だから私はあの男は駒にする」
「使い捨ての」
「所詮はだ。そうするのだ」
こう言ったのである。
「奴は気付いていないがな」
「気付かないというのも愚かですね」
「実にな。そうした者だから駒にするのだからな」
「そうですね。では」
「後で私も出るかもな。だが」
「だが?」
「話を変える」
そうするとだ。やはりハンバーグを食べながら言ったのだった。
「このハンバーグだが」
「美味でありですね」
「ビスマルクの好物だった。だが我が国ではだ」
「鉄血宰相の好物というイメージはありませんね」
「むしろだな」
「はい。子供の好物です」
日本ではどうしてもそうしたイメージになっている。それはお子様ランチや給食のせいだ。そのことをだ。執事は己の主に一言で述べたのである。
「ですが実はですか」
「そうだ。そうした一面もあるのだ」
「そのことを考えるとハンバーグも」
「今こうして私が食べてもいいのだ」
「宰相になろうという方でも」
「子供が食べるものでもあり私が食べるものでもある」
ハンバーグについてこう述べる。
「それがハンバーグなのだ」
「左様ですか」
「美味かった」
食べ終えた。そのハンバーグをだ。
そしてすぐに今度はパンが前に出された。そのパンを食べてだ。権藤は今度はこう言った。
「パンはだ」
「パンはとい
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ