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戦国異伝
第六十三話 岐阜その一

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                     第六十三話  岐阜
 稲葉山においてだ。信長は家臣達にあることを言った。
「一つやるべきことがある」
「といいますと政ですか」
「そのことですな」
「そうじゃ。中は整ってきておる」
 町や田畑のことはだというのだ。
「だが政は中だけではないのじゃ」
「外もですな」
「それもありますか」
「そうじゃ。外じゃ」
 まさにだ。その外の話をするのだった。
「美濃の東じゃが」
「武田ですか」
「信濃にいるあの家ですか」
「そうじゃ。武田じゃ」
 まさにだ。その武田のことをだ。信長は話した。
「今武田も中の政をしておるがじゃ」
「それでもやがては」
「武田も動く」
「そしてその時は」
「美濃に来るじゃろう」
 そう読んでいた。それはどうしてなのかもだ。信長は言った。
「武田信玄は上洛を考えておるからじゃ」
「だからですか」
「その武田とどう対するか」
「それですな」
「武田と戦をすれば唯では済まぬ」
 信長は確かな声で家臣達に述べる。
「勝つにしてもじゃ」
「はい、武田信玄に二十四将と人が揃っています」
「しかも武田の兵はあまりにも強いです」
「天下で最強とも言われています」
「その武田の軍勢も五万に達する」
 信長が言うのはその兵の数だった。家臣達の言葉を補足するものだった。
「その武田と対して確実に勝つには我等はまだ力が足りぬ」
「ではどうするべきか」
「それですが」
「武田には上杉という敵がおる」
 ここで信長は武田の宿敵であるこの家の名を出した。
「そして関東にも出ておるがそこでも多くの敵を抱えておる」
「北条殿とは手を結んでいますが」
「それでもですな」
「そうじゃ。武田には敵が多い」
 信長はこのことを話していく。
「それをどうするかじゃ」
「武田にとってはそれが課題ですか」
「敵が多いことが」
「そこに我等も敵になる」
 信長は自分達の話も入れた。
「武田にとってはどうじゃ」
「かなり辛いですな」
「四方を完全に敵に囲まれるとなると」
「織田を敵に回すと必然的に徳川も敵になる」
 三河の彼等だ。彼等も敵になるというのだ。そうなればだ。武田から見ればだった。
「厄介なことこのうえないな」
「では武田は我等に対してどう考えているか」
「それを考えるのですな」
「左様、そこじゃ」
 まさにそこにあるというのである。信長の言うことは。
「それでじゃが」
「武田は今葉と手も我等まで敵にしたくない」
「そうですな」
「無論我等もそうじゃ」
 織田もだった。武田という強い敵、しかも上洛を控えて東に敵を抱えるというのはだ。避けなければならなかった。そうしたことを考えればだった。
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