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戦国異伝
第六十二話 名軍師その十二
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は百薬の長です」
 古来よりある言葉をだ。謙信も言った。
「ですから」
「共に飲むのによい」
「茶よりも」
「少なくとも私はこれです」
 そのだ。酒だというのだ。言いながらまた飲む謙信だった。
「それができぬというのは残念至極です」
「しかし。殿が共に飲みたいと言われる大名はです」
「これまで甲斐の虎だけでした」
 好敵手であるだ。彼だけだというのである。
「しかし今はです」
「尾張の蛟龍」
「あの者も」
「だから残念に思います」
 実際にだ。謙信の表情はそうしたものになっていた。
「彼が飲めないというのは」
「如何にも飲みそうですが」
「人はわからないものですね」
 謙信は信長が酒を飲めないことについて言う。
「私もそれは思います」
「飲みそうで実は飲まない」
「そのことがですね」
「とにかくです。今はです」
「はい、我等の為すべきことをする」
「そうしましょう」
 政だった。それをするというのだ。
 そのことを話してだった。謙信はまた飲むのだった。
 謙信は信長のことを認めた。そうしてなのだった。彼と会うことをだ。楽しみにもしているのだった。


第六十二話   完


                  2011・10・18
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