第六十二話 名軍師その七
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「この二つじゃ」
「どちらもですな」
「民を治めずして国はない」
ここから話すのだった。まずは民だった。
「そうじゃな」
「まずは民ですね」
「民を安んずることが政じゃ」
「ではその為には」
「何をすべきだというのじゃな」
「信長様はどうされているのでしょうか」
その政についてだ。竹中は踏み込んで尋ねた。
「一体どうされておられますか?」
「堤を作り田畑を開墾し町を整え道を築く」
「他には」
「検地を行い刀や弓を集めておる」
「検地に刀狩りですか」
「うむ」
それをしているだ。信長は答えだ。
「余計な反乱が起こってそれで民が傷ついては元も子もない」
「反乱は抑えると」
「そうじゃ。事前にな」
起こる前に起こらせない様にする。それが肝心だというのだ。
「だからじゃ。刀は集める」
「そして検地は」
「力を一つに集める為じゃ」
だからこその検地だというのだ。
「土地を全て織田家の治めるところとする」
「国人や寺社、そうした者達の土地をですか」
「国人達は全て織田家の家臣じゃ」
既にだ。信長は彼等をそうして扱っている。独立した存在ではなく家臣としてだ。国人達を織田家に組み入れていっているのだ。
そしてだ。寺社についてはこう言う。
「僧兵は駄目じゃ」
「不要ですか」
「あれもまた乱の元じゃ。好き勝手をしてはな」
「延暦寺の様に」
「あの寺は度々都に入り乱しておる」
これはこの頃だけではない。古来からだ。かの白河法皇や鎌倉幕府を以てしても彼等にはどうすることもできなかったのである。
だがその彼等についてだ。信長はこう看破した。
「勝手は許さぬ」
「天下の為にですか」
「そうじゃ。僧侶は学びそして人の迷いや苦しみを救うもの」
それが僧侶だというのだ。
「余計な土地や薙刀の類はいらぬわ」
「確かに。しかしです」
「土地や薙刀はどうしても必要になるというのじゃな」
「戦乱の世ですから」
古来より争いはあった。僧兵達もただいるだけではないのだ。荘園とそこにいる民達を護る為に存在しているのだ。寺の力を誇示するだけのものではないのだ。
そのことをだ。竹中は信長に言うのである。
「ですからどうしても」
「安心せよ。寺社には檀家を置き」
「檀家ですか」
「そうじゃ。それで糧にさせる」
それによってだ。荘園に替えるというのだ。生きていくだけのものは保障させるというのだ。
「して僧兵はじゃ」
「それも不要なものとされますか」
「治めるからには賊は許さぬ。徹底的に取り締まる」
「既に尾張や伊勢で為されている様に」
「そうして僧兵なぞ不要にするわ」
「天下泰平ですか」
「うむ」
またしても確かな声で言い切る信長だった。
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