第六十二話 名軍師その六
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「そうですね」
「わかるか」
「はい」
そうだとだ。また答える声の主だった。
「おおよそですが」
「どうするのじゃ。それで」
「御願いします」
これが返答だった。
「では」
「うむ」
このやり取りからだった。屋敷の玄関にだ。
涼しげな顔立ちの青年が出て来た。身なりは質素だが清潔だ。その彼が信長の前に出て来てだ。一礼してからこう名乗るのだった。
「竹中重治といいます」
「うむ」
信長は微笑んで彼の名乗りに応え。それからだ。彼自身も名乗った。
「織田上総介信長じゃ」
「はじめまして」
竹中は名乗りからこう挨拶をした。そのうえでこう信長に尋ねた。
「今日はどの御用件で」
「御主と話がしたい」
こう述べる信長だった。
「御主とじゃ」
「私とですか」
「そうじゃ。それは駄目か」
信長は笑みのまま竹中に尋ねる。
「どうじゃ。それは」
「茶を淹れます」
竹中は信長の問いにこう答えた。
「では」
「うむ。それではじゃ」
信長は平手と柴田にも挨拶をさせそのうえでだった。竹中の招きに応じてそのうえで彼の屋敷の中に入った。そうして応接の落ち着いた趣の部屋でだ。竹中の淹れた茶を飲んでからだ。彼にだ。こう言われたのだった。
「美濃を手に入れられましたね」
「そうなった」
信長は茶を置いてから竹中に答える。
「そして今はじゃ」
「天下をですか」
「美濃で終わりとは思ってはおらん」
信長は不敵な笑みを浮かべつつ述べる。
「天下を手に入れる」
「ではです」
天下と聞いてだ。竹中はその信長を見てだ。あらためて問うた。
「何の為に天下を目指されますか」
「その理由か」
「はい。その理由は何でしょうか」
「収める為じゃ」
「収める、ですか」
「治めるでもよい」
どちらの意味もあるというのだ。今の言葉は。
「まずは収めるのはじゃ」
「何を収められるのでしょうか」
「戦乱を収める」
信長の顔が真面目なものになった。そのうえでだ。
この言葉をだ。竹中に対して告げたのである。
「収めるのはそういう意味じゃ」
「応仁より続いているこの戦乱をですか」
「うむ、収める」
信長はまた言った。その表情は変わらない。
「その収めるじゃ」
「ではです」
竹中は信長の収めるを聞いた。そして今度はだった。
治めるについてだ。彼に問うことにしてだ。実際に問うた。
「では治めるは」
「それじゃな」
「何を治められるのでしょうか」
「民、そして天下じゃ」
治めるのはこの二つだった。今度は一つではなかった。
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