第六十二話 名軍師その五
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「それを手に入れる為にじゃ」
「まずは美濃を手に入れられた」
「そういうことでしたか」
「美濃は都に近いうえに豊かな国じゃ」
そのことは四人衆も知っていた。それも実によくだ。そのうえでの言葉だった。
「ここを押さえれば天下に一気に近くなる」
「ただ手に入れられただけではなくですか」
「そこまで考えておられたのですか」
「さて、それをあの者にも話そう」
また言う信長だった。
「半兵衛にもな」
「ではそうされますか」
「そうしてですな」
「わしの考えを全て話す」
その天下への考えをだというのだ。
「後はあの者がどう考えるかじゃ」
「そうして殿の家臣になるかどうか」
「それはあの者次第ですか」
「わしは誘うが決めるのはあの者じゃ」
他ならぬだ。竹中だというのだ。
「どうするかはな」
「執着はされぬのですか」
「茶器は金を出せば買えるが人はそうはいかん」
氏家に対して答える。
「特に志のある優れた者はな」
「そうだと仰るのですか」
「半兵衛は」
「実際に御主等もそうじゃ」
四人衆に対しても同じだというのである。
「わしの家臣になる前に随分とわしを見たな」
「はい」
その通りだとだ。答えたのは不破だった。確かな声で。
「そうさせてもらいました」
「そういうことじゃ。大したことのない者は金にもなびく」
人は確かにそうだがそれは小者のみだというのだ。
「しかし確かな者はそうはいかん」
「金ではなびきはしない」
「茶器と違って」
「だからこそですか」
「執着しても仕方がない」
あっさりと言う信長だった。
「そういうことじゃ」
こうした話をしながらだ。信長は安藤達四人衆に案内されそのうえで山の中の質素な屋敷の前に来た。そこは一見すると庵に見える。その屋敷の竹の門の前に来てだ。
信長は稲葉に問うた。
「一徹、ここじゃな」
「はい」
その通りだとだ。稲葉は信長に答える。
「ここにおりまする」
「ふむ」
その竹の門に山の木々や花がある庭、それにやはり竹での囲いを見てだ。信長は言うのだった。
「中々よい趣味じゃな」
「風流ですな」
平手もここで言う。
「それがありますな」
「半兵衛はそれも解するか」
「では茶の道もでしょうか」
「そうやも知れぬな」
門から見てだ。そのうえでの話だった。
「さて、では入ろうぞ」
「はい、それでは」
「今から」
こうしてだった。まずは安藤が出てだ。門を開ける。そうしてだ。
庭に入りだ。こう屋敷に向けて言った。
「おるか」
「その声は」
「そうじゃ。わしじゃ」
安藤は声の主に対して述べた。
「御主に会って欲しい方がおる」
「織田信長殿ですね」
すぐにこう言うのだった。その声の主は
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