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戦国異伝
第六十二話 名軍師その四

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「わしもそうしておるのじゃ」
「武田のことを聞いてですか」
「そうして取り入れられたのですか」
「取り入れてならんという決まりはなかろう」
 他の家のことを学び取り入れることにだ。信長は何の躊躇いも見せなかった。
「それは違うか」
「確かに。それは」
「例え武田でも上杉でもいいものは取り入れるべきですな」
 四人衆もそれは同意だった。
「そうして己のものにして力にしていく」
「そういうことですな」
「その通りじゃ。美濃を手に入れ兵も増えた」
 五万五千、天下でも屈指の兵力を持つに至っている。だがそれで満足せずだ。信長は四人衆に対してこんなことも言ったのである。
「後は鉄砲じゃ」
「鉄砲もですか」
「買われるのですか」
「今千でこれはかなり無理をして手に入れた」
 伊勢を入れて百四十万石ですらだ。千の鉄砲を揃えることは容易ではなかったのだ。信長はそれをあえて行いそのうえで戦ってきたのだ。
 しかしそれ以上にだとだ。彼は言うのである。
「今度は。二千は無理にしても」
「ではどれだけでしょうか」
「やはり今まで通りでしょうか」
「千五百じゃな」
 それだけの鉄砲を揃えるというのである。
「それだけは欲しい」
「何と、さらに五百ですか」
 それを聞いて驚きの声をあげたのは柴田だ。織田家の武の筆頭の彼である。
「千五百の鉄砲とは」
「どの家にもないというのじゃな」
「はい」
 柴田は率直に答える。
「流石に聞いたことがありません」
「しかしそれをあえてやる」
 信長は不敵に笑って言う。
「それでこそじゃ」
「ううむ、それはまた」
「大胆といいますか」
「鉄砲にそこまで力を入れてですか」
「戦をされますか」
「そうじゃ。あれはまとめて撃てばかなりのものになる」
 信長は四人衆にも述べる。
「それ故にじゃ」
「確かに。千丁の鉄砲を一気に撃てば」
 安藤もそのことについて言う。
「恐ろしい音がしますな」
「例え当たらずとも音が響けばじゃ」
 どうなるかとだ。また言う信長だった。
「それでよいのじゃ」
「驚いたその間に攻撃を仕掛け」
「そうして勝っていく」
「左様ですか」
「そういうことじゃ」
 それでこその鉄砲だというのである。
「馬も止まるしのう。何かとやり方がある」
「だからこそ千丁の鉄砲を揃え」
「五万を超える兵達と共にですな」
「これからも」
「美濃で終わりではない」
 戦略のこともだ。信長は話した。
「むしろじゃ」
「これからですか」
「はじまりですか」
「そうじゃ。天下じゃ」
 信長はここでもそれを見ていた。そのうえでの言葉だった。
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