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久遠の神話
第二十五話 使い捨ての駒その二
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「お願いするわ」
「うん。それにしてもさ」
「それにしてもって?」
「いや、数学も大変だけれど」
 その他の科目もだというのだ。
「最近世界史が」
「わからないの?」
「今イスラム世界のところじゃない」
「ええ、そうだけれど」
「何か名前がさ」
「覚えにくいの?」
「そうじゃない?イスラムの名前って」
 こうだ。上城は困った顔で言うのだった。
「何かイブン何とかとかハサムとか」
「あとサダムとか?」
「そうそう、フセイン大統領は出ないけれどね」
 言わずと知れたイラクの大統領だ。独裁者だったとも言われている。
「何かね。本当にね」
「けれどフセイン大統領の名前は」
「ああ、それはね」
「覚えてるわよね」
「あれだけテレビに出たからね」
「だからなのね」
「覚えたよ、あの人は」
 フセインについては流石にだというのだ。
「サダム=フセインね」
「本名は凄く長いけれどね」
「えっ、あれ本名じゃなかったんだ」
「短縮してるらしいのよ」
「じゃあそれこそ本名は」
「もう織田上総介三郎信長みたいな感じで」
 樹里は具体的に日本の歴史上の人物を例えに出した。
「それよりもっと長くて」
「どんなのなんだろう」
「やたら長い名前だったのよ」
「そうだったんだ」
「ロシア人もそうだけれどね」
 樹里は今度はこの国の名前を出した。
「ほら、ロシア文学の本とか」
「トルストイとかドフトエフスキーとか」
「私トルストイの戦争と平和読んだけれど」
「長いんだ。名前が」
「ついでに言えば物語自体も」
 要のそれもだ。かなりのものだというのだ。
「まあその中でもね」
「登場人物の名前は」
「呪文みたいな感じで」
「呪文って」
「けれど。そんなにアラビアの名前って覚えにくいかしら」
「僕にとってはね」
 そうだというのだ。上城にとってはだというのだ。
「というか結構さ。イスラムだけじゃなくて欧州の人の名前も」
「そうそう、ジョージとかカールって名前がね」
「何度も何度も出て来るよね」
「ルイって王様も何人も出て来るから」
 教科書で有名なのは十四世と十六世だ。前者はバロック時代の絶対王政の王であり校舎はフランス革命の時代に処刑された王である。どちらもブルボン家だ。
「しかも王朝が交代してもね」
「同じ名前が続いたりね」
「今のイギリスの女王様が」
「エリザベス二世で」
「あの無敵艦隊を破った女王様が一世」
「そうなるわね」
 エリザベスという名前のイギリスの女王も一人ではないのだ。
「それで今のあちらの皇太子がチャールズさんで」
「あの人何代目のチャールズさんだったかしら」
「ええと。何世かな」
「わからないわよね」
 少し考えただけではわからないだけい
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