第六十二話 名軍師その二
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「御幼少の頃よりとかく甘いものに目がありませんでした」
「わしもよく柿やら蜜柑や西瓜を貰った」
「それがしもです。何かというと甘いものでした」
「元服してから甘いものはどうかと思っておった」
酒を飲む様になりだ。自然とそうなったというのだ。
「しかしじゃ。茶を飲むとじゃ」
「甘いものもですな」
「召し上がられたくなると」
「そうなる。それではじゃな」
ここまで話してだ。信行は家臣達にこう話した。
「では。ぼた餅を食うか」
「おお、小豆の」
「それをですか」
「あれを食いながら茶としようぞ」
信行も変わってきていた。余裕ができていた。その彼が信長の留守を守るのだった。信長はそのことをだ。竹中の隠棲の場所に向かう途中で忍の者に聞いた。
それを聞いてだ。彼は笑ってこう言うのだった。
「勘十郎も真面目一辺倒ではなくなってきたな」
「ゆとりを備えてこられていますな」
平手もその話を聞いていた。そして言ったのである。
「次第に」
「うむ。あの真面目さは確かによい」
信長は信行の真面目をよしとした。
「それ故にわしもあれにかなりのものを任せられる」
「しかしそれに加えてですか」
「そうじゃ」
今度は柴田に返す信長だった。
「そこにゆとりを備えればじゃ」
「かなり違いますか」
「勘十郎様も」
「落ち着いて多くのものが見えるようになる」
視野が拡がるというのだ。
「そこから多くのものを知ることもできる」
「ううむ、勘十郎様がよりそうなればです」
「織田家にとって大きいですな」
「あの者に付け込まれたのは仕方がない」
過去のだ。津々木のことも話される。
「じゃが。若しあの時あ奴がより大きい者ならばじゃ」
「あの者にも操られなかった」
「そうなりますか」
「若しやな」
そうなったかも知れないというのである。
「とかくあ奴は真面目に過ぎる。御主等もじゃがな」
信長は今度は平手と柴田を交互に見た。そのうえでの言葉だった。
「織田家にも案外石頭が多い」
「特にそれがしはというのですな」
平手はここでは言われる前に言った。
「そう言われますな」
「むう、読んでおったか」
「わかります。殿はそれがしを一瞬だけですが見られましたから」
そこでわかったというのだ。
「目は口程にものを言います故」
「全く。爺には適わぬのう」
「それがしは石頭でよいと思いますが」
「というか頑固でない爺は怖くて仕方がない」
逆にそうだというのだ。そうした平手は。
「これは前にも言ったか」
「はい、この前に」
「まことにそうじゃ。爺は頑固でなければならん」
「ではこのまま頑固を通します」
「そうしてくれ。それは権六もじゃな」
ここで柴田も見るのだった。織田家きって
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